都市部の喘息小児の病的状態の発生におけるゴキブリアレルギーとゴキブリアレルゲン曝露の役割
THE ROLE OF COCKROACH ALLERGY AND EXPOSURE TO COCKROACH ALLERGEN IN CAUSING MORBIDITY AMONG INNER-CITY CHILDREN WITH ASTHMA
D.L. ROSENSTREICH AND OTHERS
特定のアレルゲンに対するアレルギーを有し,寝室のハウスダスト中に含まれるそのアレルゲンに高濃度曝露している都市部の小児では,喘息関連の健康問題がもっとも深刻である,という仮説がある.
1992 年 11 月~1993 年 10 月に,米国の都市部 8 ヵ所から喘息の小児 476 人(年齢 4~9 歳)を組み入れた.ゴキブリアレルゲン,チリダニアレルゲン,ネコアレルゲンに対する即時型過敏反応を皮膚試験によって測定した.次にハウスダスト中のゴキブリの主要アレルゲン(Bla g 1),チリダニの主要アレルゲン(Der p 1 と Der f 1),ネコのフケの主要アレルゲン(Fel d 1)を,モノクローナル抗体を用いた酵素免疫測定法により測定した.高濃度曝露は,疾患を引き起す閾値として提案されているものに基づいて定義した.喘息による病的状態に関するデータを,ベースライン時と 1 年間にわたって収集した.
476 人のうち,36.8%がゴキブリアレルゲンに対するアレルギー,34.9%がチリダニアレルゲンに対するアレルギー,22.7%がネコアレルゲンに対するアレルギーを有していた.これらの小児の寝室のうち,ハウスダスト中に高濃度のゴキブリアレルゲンが認められた割合は 50.2%であり,高濃度のチリダニアレルゲンは 9.7%,高濃度のネコアレルゲンは 12.6%に認められた.性別,子どもの行動チェックリスト(Child Behavior Checklist)のスコア,喘息の家族歴について補正後,ゴキブリアレルゲンに対するアレルギーを有し,かつこのアレルゲンに高濃度曝露している小児では,年間入院率が 0.37 であったのに対し,他の小児では 0.11(p = 0.001)であり,喘息による予定外受診が年間 2.56 回であったのに対し,他の小児では 1.43 回であった(p<0.001).これらの小児では,喘鳴が生じた日数,学校欠席日数,夜眠れなかった日数も有意に多く,その保護者または介護者は,児の喘息のために,夜間に起き,昼間の予定を変更する頻度がより高かった.チリダニまたはネコのフケに対するアレルギーとその高濃度のアレルゲンとの組合せでは,同様のパターンはみられなかった.
ゴキブリアレルギーとこのアレルゲンへの高濃度曝露との組合せが,都市部の小児における喘息関連の健康問題の頻度を説明するのに役立つ可能性がある.