ヒト免疫不全ウイルス感染患者における口腔アフタ性潰瘍の治療としてのサリドマイド
Thalidomide for the Treatment of Oral Aphthous Ulcers in Patients with Human Immunodeficiency Virus Infection
J.M. JACOBSON AND OTHERS
進行したヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染患者では,口腔および咽頭のアフタ性潰瘍が広汎に起り,衰弱に至ることがありうる.予備的な報告では,サリドマイドが口腔アフタ性潰瘍の治癒を促進することが示唆されている.
われわれは,HIV 感染患者の口腔アフタ性潰瘍の治療法として,サリドマイドの二重盲検無作為プラセボ対照臨床試験を実施した.患者は,サリドマイド 200 mg またはプラセボのいずれかを 1 日 1 回 4 週間にわたって服用した.潰瘍の状態,QOL,そして毒性の証拠について患者を毎週評価した.血漿腫瘍壊死因子α(TNF-α),可溶性 TNF-α受容体,そして HIV RNA の測定を行った.
サリドマイド群では,29 人中 16 人(55%)が 4 週間後にアフタ性潰瘍が完治したのに対し,プラセボ群では 28 人中 2 人のみであった(7%,オッズ比,15;群の継続試験に関して補正後の 95%信頼区間,1.8~499;未補正 p<0.001).サリドマイド治療によって,疼痛は軽減し,食機能も改善した.サリドマイドについて認められた副作用は,傾眠および湿疹(それぞれ患者 7 人)で,患者 29 人中 6 人が毒性のために治療を中断した.サリドマイド治療は HIV RNA 量を増加させた(増加の中央値,0.42 log10 コピー/mL;プラセボによる増加,0.05;p = 0.04).サリドマイド治療では,TNF-α および可溶性 TNF-α 受容体の血漿濃度が予期しないほど増加した.
サリドマイドは,HIV 感染患者の口腔および咽頭のアフタ性潰瘍の有効な治療である.