急性リンパ芽球性白血病の患児に対する寛解導入化学療法後のヒト顆粒球コロニー刺激因子
HUMAN GRANULOCYTE COLONY-STIMULATING FACTOR AFTER INDUCTION CHEMOTHERAPY IN CHILDREN WITH ACUTE LYMPHOBLASTIC LEUKEMIA
C.-H. PUI AND OTHERS
遺伝子組換えヒト顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF,別名フィルグラスチム)は,強化化学療法後の好中球減少症からの回復を早めるが,小児白血病の管理におけるその役割は明らかでない.
急性リンパ芽球性白血病の患児 164 人(年齢範囲,生後 2 ヵ月~17 歳)を,プラセボまたは G-CSF(10 μg/kg 体重/日,皮下投与)に無作為に割付け,寛解導入療法終了後 1 日目に投与を開始し,好中球数が 2 日連続で 1,000/mm3 以上になるまで継続した.この療法の臨床効果と検査値上の効果を 21 日間記録した.G-CSF の血漿中濃度時間曲線下面積を,両群とも 1 日目と 7 日目に測定した.
増殖因子に対する反応は,148 人(G-CSF 群 73 人,プラセボ群 75 人)について評価することができた.G-CSF の投与により,発熱性好中球減少症による入院率は有意には低下せず(G-CSF 群 58% 対 プラセボ群 68%,相対リスク 0.85,95%信頼区間 0.59~1.16),3 年無イベント生存率が上昇することもなく(両群とも 83%),重症感染症数が減少することもなかった(G-CSF 群 5 人 対 プラセボ群 6 人).G-CSF を投与した患者では,入院期間の中央値が短く(6 日 対 10 日,p=0.011),記録された感染症が少なかった(12 対 27,p=0.009).支持療法の総費用の中央値は,G-CSF 群とプラセボ群で同程度であった(それぞれ 8,768 ドル,8,616 ドル).G-CSF またはプラセボ注射の最初の週に発熱性好中球減少症を起こさなかった患児では,7 日目の増殖因子への全身曝露量が高いほど,その後の入院の確率が有意に低いことと関連した(p=0.049).
急性リンパ芽球性白血病に対する寛解導入化学療法を行った患児において,G-CSF 投与はいくらかの臨床的利益をもたらしたものの,発熱性好中球減少症による入院率を低下させず,生存期間を延長せず,支持療法の費用を減少させなかった.