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January 23, 1997 Vol. 336 No. 4

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心筋梗塞後の心室機能障害と脳卒中のリスク
VENTRICULAR DYSFUNCTION AND THE RISK OF STROKE AFTER MYOCARDIAL INFARCTION

E. LOH AND OTHERS

背景

心筋梗塞の既往がある患者において,脳卒中の長期リスクと左室機能障害の程度との関係は明らかにされていない.われわれは,左室駆出率の低下が心筋梗塞後の脳卒中のリスクの増加に関連するか否か,そして高齢や抗凝固薬,血栓溶解薬,またはカプトプリルによる治療などのその他の要因が脳卒中の長期発生率に影響を及ぼすか否かを検討した.

方 法

生存および心室肥大臨床試験(Survival and Ventricular Enlargement [SAVE] trial)に登録し,急性心筋梗塞後に左室機能障害を有する患者 2,231 人について前向きに収集したデータの観察分析を行った.平均追跡調査期間は 42 ヵ月であった.単変量および多変量 Cox 比例危険分析の双方によって,脳卒中の危険因子を求めた.

結 果

2,231 人のうち,103 人(4.6%)が試験中に致死的または非致死的脳卒中を発症した(追跡調査 1 年あたりの脳卒中発生率,1.5%).すべての患者における脳卒中の推定 5 年発生率は 8.1%であった.脳卒中を発症していない患者と比較すると,脳卒中患者は高齢(平均 [±SD] 年齢,63±9 歳 対 59±11 歳;p<0.001)で,駆出率が低下していた(29±7% 対 31±7%,p = 0.01).脳卒中の独立危険因子は,低い駆出率 (駆出率が 5%低下するごとに脳卒中のリスクは 18%増加),高齢,アスピリンまたは抗凝固薬治療を行っていないことなどであった.心筋梗塞後の駆出率≦28%の患者の脳卒中の相対リスクは,駆出率>35%の患者と比較して 1.86 であった(p = 0.01).血栓溶解薬およびカプトプリルの投与は,脳卒中のリスクに有意な作用を及ぼさなかった.

結 論

心筋梗塞後 5 年間に,患者は脳卒中のリスクをかなり有する.駆出率の低下および高齢は,いずれも脳卒中のリスク増加の独立予測因子である.抗凝固療法は,心筋梗塞後の脳卒中に対して保護作用を示すようである.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1997; 336 : 251 - 7. )