ごく軽度または軽度子宮内膜症の不妊症女性における腹腔鏡手術
LAPAROSCOPIC SURGERY IN INFERTILE WOMEN WITH MINIMAL OR MILD ENDOMETRIOSIS
S. MARCOUX, R. MAHEUX, S. BÉRUBÉ AND THE CANADIAN COLLABORATIVE GROUP ON ENDOMETRIOSIS
不妊女性では,ごく軽度または軽度の子宮内膜症と診断されることがしばしばある.病変の切除または剥離によって治療することが多いが,これが不妊症を改善するか否かは確立されていない.われわれは無作為化対照試験を実施して,ごく軽度または軽度子宮内膜症の不妊女性の生殖能が,腹腔鏡手術により増強されるか否かを明らかにした.
20~39 歳のごく軽度または軽度子宮内膜症の不妊女性 341 人を対象とした.これらの女性を,診断的腹腔鏡検査中に,目に見える子宮内膜症の切除または剥離を行う群と,診断的腹腔鏡検査のみを行う群に無作為に割り付けた.腹腔鏡検査後 36 週間追跡調査し,その期間に妊娠した女性に関しては,妊娠 20 週まで追跡調査した.
子宮内膜症の切除または剥離を受けた女性では 172 人中 50 人が妊娠し,20 週以上妊娠が継続したのに対し,診断的腹腔鏡検査群の女性では 169 人中 29 人が妊娠した(累積確率はそれぞれ,30.7%および 17.7%;p=0.006,log-rank 検定による).妊娠率(100 人月あたりの妊娠数)はそれぞれ,4.7 と 2.4 であった(率比,1.9;95%信頼区間,1.2~3.1).腹腔鏡手術群では,確認されたすべての妊娠例の 20.6%に流産が起り,診断的腹腔鏡検査群では 21.6%に流産が起った(p=0.91).4 例の軽度の手術合併症(腸挫傷,卵管漿膜のわずかな裂傷,気腹困難,血管損傷)が報告された(手術群 3 例,対照群 1 例).
ごく軽度および軽度子宮内膜症の腹腔鏡による切除または剥離は,不妊症女性の生殖能を増強する.