April 16, 1998 Vol. 338 No. 16
下肢急性動脈閉塞症の初回治療としての遺伝子組換えウロキナーゼと血管手術との比較
A COMPARISON OF RECOMBINANT UROKINASE WITH VASCULAR SURGERY AS INITIAL TREATMENT FOR ACUTE ARTERIAL OCCLUSION OF THE LEGS
K. OURIEL, F.J. VEITH, AND A.A. SASAHARA
最近の対照臨床試験は,血栓溶解療法が下肢急性動脈閉塞症に対する有効な初回治療である可能性を示唆している.最初に血栓溶解療法を行うことで得られうる主な利益は,下肢虚血をより侵襲性の低い介入で管理できる点である.
北米および欧州の 113 ヵ所で実施された無作為化多施設共同試験において,血管手術(血栓除去術やバイパス手術)と,遺伝子組換えウロキナーゼの経カテーテル動脈内注入による血栓溶解を比較した;全例(各群 272 例)が,下肢急性動脈閉塞症発症後 14 日以内であった.注入は 48 時間(平均 [±SE],24.4±0.86)に限定し,その後必要に応じて病変部を手術または血管形成術で修復した.主要エンドポイントは 6 ヵ月無切断率であった.
ウロキナーゼを投与した患者のうち,最終血管造影が得られたのは 246 例で,そのうち 196 例(79.7%)に再開通を認め,167 例(67.9%)に血栓の完全な溶解を認めた.いずれの治療群も,平均足関節上腕血圧比に同程度の有意な改善を認めた.ウロキナーゼ群の無切断率は 6 ヵ月で 71.8%,1 年で 65.0%で,これに対し,手術群ではそれぞれ,74.8%と 69.9%であった;差に関する 95%信頼区間は,6 ヵ月で -10.5~4.5%ポイント(p=0.43),1 年で -12.9~3.1%ポイント(p=0.23)であった.6 ヵ月の時点で,切開を伴う外科的処置(下肢切断を除く)は手術群では 551 件施行されていたのに対し,血栓溶解群では 315 件であった.大出血は,ウロキナーゼ群では 32 例(12.5%)に発生したのに対し,手術群では 14 例(5.5%)であった(p=0.005).ウロキナーゼ群では頭蓋内出血が 4 件(1.6%)あり,うち 1 件は致死的であった.対照的に,手術群では頭蓋内出血は発生しなかった.
ウロキナーゼの動脈内注入は,出血性合併症の頻度は高くなるものの,下肢切断や死亡のリスクを有意に上昇させることなく,切開を伴う外科的処置の必要性を低下させた.