April 30, 1998 Vol. 338 No. 18
心ミオシン結合 C 蛋白遺伝子変異と遅発型家族性肥大型心筋症
MUTATIONS IN THE GENE FOR CARDIAC MYOSIN-BINDING PROTEIN C AND LATE-ONSET FAMILIAL HYPERTROPHIC CARDIOMYOPATHY
H. NIIMURA AND OTHERS
心ミオシン結合 C 蛋白遺伝子の変異は,家族性肥大型心筋症の症例の約 15%の原因である.疾患を引き起す変異の範囲とこれらの遺伝子欠損の関連する臨床特徴はわかってい ない.
非血縁の家族性肥大型心筋症患者において,心ミオシン結合 C 蛋白をコードする DNA 配列を決定した.発端者 16 人に変異を認め,彼らにはこれらの欠損を遺伝するリスクを有する親族 574 人があった.これらの家族の遺伝子型を決定し,心ミオシン結合 C 蛋白遺伝子に変異を示す親族 212 人の臨床状態を評価した.
16 の家系の発端者に新規変異 12 個を確認した.4 個はミスセンス変異であった; 欠損 8 個(挿入,欠失,そしてスプライシング変異)は,心ミオシン結合 C 蛋白を切断すると予測された.ミスセンスまたは切断変異のいずれかの臨床発現は,他の遺伝的原因による肥大型心筋症と同様であったが,発病時年齢は著しく異なった.心ミオシン結合 C 蛋白遺伝子変異を有する 50 歳未満の成人では,心肥大を発症したのは58%(患者 117 人中 68 人)にすぎなかった;疾患の発現率は 60 歳までなお不完全であった.生存は,サルコメア蛋白遺伝子の他の変異によって発症する肥大型心筋症患者で認められるよりもおおむね良好であった.これらの親族では心臓に原因するほとんどの死亡が,突然に起った.
心ミオシン結合 C 蛋白遺伝子変異の臨床発現は,中年または高齢になるまで遅れることが多い.心臓肥大の発現の遅れと,臨床経過が良好であるために,心ミオシン結合 C 蛋白遺伝子における変異の遺伝特性が認識できない可能性がある.肥大型心筋症を特徴とする家系の人には,成人期での臨床スクリーニングを実施する必要がある.