アポリポ蛋白 B 遺伝子変異と高コレステロール血症および虚血性心疾患のリスクとの関連
ASSOCIATION OF MUTATIONS IN THE APOLIPOPROTEIN B GENE WITH HYPERCHOLESTEROLEMIA AND THE RISK OF ISCHEMIC HEART DISEASE
A. TYBJÆRG-HANSEN, R. STEFFENSEN, H. MEINERTZ, P. SCHNOHR, AND B.G. NORDESTGAARD
家族性高コレステロール血症は,早発性虚血性心疾患の原因となり,低比重リポ蛋白受容体の遺伝子変異によって引き起されることが多い.この受容体のリガンドをコードするアポリポ蛋白 B 遺伝子の変異も,この表現型をもたらす可能性がある.
全員デンマーク人から成る,一般集団の男女 9,255 人,虚血性心疾患患者 948 人,家族性高コレステロール血症患者 36 人の遺伝子型において,アポリポ蛋白 B 遺伝子の三つの変異,Arg3500Gln,Arg3531Cys,Arg3500Trp を検索した.
一般集団におけるヘテロ接合の保有率は,Arg3500Gln 変異と Arg3531Cys 変異はともに 0.08%(95%信頼区間,0.03~0.16%),Arg3500Trp 変異は 0.00%(95%信頼区間,0.00~0.18%)であった.Arg3500Gln 変異保有者は,非保有者よりもコレステロール濃度が有意に高く,一般集団では 100 mg/dL(2.6 mmol/L)高く,虚血性心疾患患者では 154 mg/dL (4.0 mmol/L)高く,家族性高コレステロール血症患者では 172 mg/dL(4.5 mmol/L)高かった.Arg3500Gln 変異のヘテロ接合保有者は,一般集団よりも虚血性心疾患患者に有意に多く(オッズ比,7.0;95%信頼区間,2.2~22;p=0.003),家族性高コレステロール血症患者においても有意に多かった(オッズ比,78;95%信頼区間,16~388;p=0.001).一般集団における Arg3531Cys 変異のヘテロ接合保有者は,血漿コレステロール濃度が正常値を超えることはなく,虚血性心疾患のリスクが高いこともなかった(オッズ比,1.4;95%信頼区間,0.2~11;p=0.54).
アポリポ蛋白 B-100 の家族性の欠損の原因であり,デンマーク人 1,000 人に約 1 人の割合で存在するアポリポ蛋白 B 遺伝子の Arg3500Gln 変異は,重症高コレステロール血症を引き起し,虚血性心疾患のリスクを上昇させる.