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February 26, 1998 Vol. 338 No. 9

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真性多血症患者からの赤血球前駆細胞における Bcl-x の発現
EXPRESSION OF Bcl-x IN ERYTHROID PRECURSORS FROM PATIENTS WITH POLYCYTHEMIA VERA

M. SILVA AND OTHERS

背景

エリスロポエチン依存的赤芽球細胞株では,アポ トーシスの阻害物質である Bcl-xL が制御されずに発現することにより,エリスロポエチンの減少によって誘発されるアポトーシスが防がれる.真性多血症では,赤芽球前駆細胞の異常クローンがエリスロポエチンに依存しないため,われわれは Bcl-xL の内因性発現がこれらの細胞において脱制御されているか否かを調べた.

方 法

真性多血症患者および健常被験者からの赤血球コロニーを,エリスロポエチンの存在下および非存在下で培養し,2 種類の Bcl-x(Bcl-xL と Bcl-xS)を認識する抗 Bcl-x 抗体を用いた免疫細胞化学およびフローサイトメトリー分析によって評価した.逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応分析を用いて,2 種類のうちいずれが抗 Bcl-x 染色に関与しているかを調べた.健常骨髄ドナー 8 人,真性多血症患者 14 人,その他の骨髄増殖症候群患者 19 人,および二次性赤血球増加症患者 12 人の骨髄単核細胞を,Bcl-x に対する抗体と赤血球マーカーであるグリコフォリン A を用いたフローサイトメトリーによって分析した.

結 果

真性多血症患者の赤血球細胞は,エリスロポエチンがなくとも in vitro で生存し,この知見は,通常 Bcl-x を発現しない成熟赤芽球においても,Bcl-x 蛋白の発現と相関した(Bcl-xL メッセンジャー RNA が,認められた Bcl-x の主なものであった).真性多血症患者 14 人において,グリコフォリン A と Bcl-x の双方が陽性である細胞の平均(±SD)百分率(21.8±3.6%)は,健常ドナー 8 人(6.62±1.58%),二次性赤血球増加症患者 12 人(6.87±1.95%),本態性血小板減少症患者 9 人(3.81±0.97%),そして慢性骨髄性白血病患者 10 人(2.7±0.41%)における百分率より有意に高かった.

結 論

Bcl-x 発現の脱制御は,真性多血症における赤血球系細胞のエリスロポエチン非依存的生存に関与し,それによってこの疾患の発病に関与する可能性がある.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1998; 338 : 564 - 71. )