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February 26, 1998 Vol. 338 No. 9

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真性多血症患者の血小板トロンボポエチン受容体の発現障害
IMPAIRED EXPRESSION OF THE THROMBOPOIETIN RECEPTOR BY PLATELETS FROM PATIENTS WITH POLYCYTHEMIA VERA

A.R. MOLITERNO, W.D. HANKINS, AND J.L. SPIVAK

背景

多能性造血前駆細胞に由来する真性多血症の原因は不明である.トロンボポエチンは,多能性造血前駆細胞と血小板の産生を制御する造血因子である.トロンボポエチンの媒介するシグナル伝達における異常が真性多血症の発病に関係している可能性を評価するために,われわれは,この疾患患者の血小板におけるトロンボポエチンによる蛋白のチロシンリン酸化とトロンボポエチン受容体の発現を調べた.

方 法

真性多血症またはその他の慢性骨髄増殖障害患者と対照被験者の血液から血小板を単離した.血小板をトロンボポエチンまたはトロンビンに曝露し,その後溶解して,血小板蛋白のチロシンリン酸化の分析およびイムノブロッティングによる蛋白の発現を行った.血小板および巨核球によるトロンボポエチン受容体(Mpl)の発現についても評価した.

結 果

トロンボポエチンによる蛋白のチロシンリン酸化は,真性多血症患者 20 人および特発性骨髄線維症患者 3 人の血小板では障害されていたが,本態性血小板増加症患者 4 人,慢性骨髄性白血病患者 3 人,二次性赤血球増加症患者 6 人,鉄欠乏性貧血患者 2 人,ヘモクロマトーシス患者 4 人,または健常被験者 5 人では障害されていなかった.トロンビンによる蛋白チロシンリン酸化は,真性多血症患者の血小板では無傷で,このプロセスに関係するチロシンキナーゼと基質は,正常量存在していた.しかし,真性多血症患者 34 人中 34 人,そして特発性骨髄線維症患者 14 人中 13 人では,血小板トロンボポエチン受容体 Mpl の発現は,著しく減少していたかまたは存在しなかった.これら 2 疾患の患者におけるトロンボポエチンによる蛋白のチロシンリン酸化の障害は,Mpl 発現の著しい減少またはその発現の欠損と等しく関連していた.真性多血症患者では,血小板による Mpl 発現の減少は巨核球による Mpl 発現の減少と関連していた.

結 論

トロンボポエチン受容体 Mpl 発現の減少は,真性多血症および特発性骨髄線維症の特徴である.この異常は,真性多血症とその他のタイプの赤血球増加症を区別するように思われる.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1998; 338 : 572 - 80. )