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November 26, 1998 Vol. 339 No. 22

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血栓性血小板減少性紫斑病と溶血性尿毒症性症候群における von Willebrand 因子開裂プロテアーゼ
VON WILLEBRAND FACTOR–CLEAVING PROTEASE IN THROMBOTIC THROMBOCYTOPENIC PURPURA AND THE HEMOLYTIC–UREMIC SYNDROME

M. FURLAN AND OTHERS

背景

血栓性血小板減少性紫斑病および溶血性尿毒症性症候群は,類似の徴候および症状を示す血小板凝集の重度微小血管疾患である.これら二つの疾患では,強い切断力のもとでも循環中の血小板を凝集させることができる von Willebrand 因子の非常に大きい多量体が生じている.われわれは,これらの家族性および非家族性型の疾患を有する患者における von Willebrand 因子開裂プロテアーゼ欠損症の発生率を調べた.

方 法

血栓性血小板減少性紫斑病または溶血性尿毒症性症候群の患者 53 人から血漿サンプルを得た.Von Willebrand 因子開裂プロテアーゼは,精製した正常 von Willebrand 因子を基質として用いて,血漿サンプルを希釈してアッセイした von Willebrand 因子の分解の程度は,ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)アガロースゲルでの電気泳動およびイムノブロットによって評価した.von Willebrand 因子開裂プロテアーゼの阻害物質が存在するか否かを明らかにするために,患者の血漿とともにインキュベートした後の正常血漿中のプロテアーゼ活性を測定した.

結 果

血栓性血小板減少性紫斑病患者 30 人と溶血性尿毒症性症候群患者 23 人を調べた.非家族性血栓性血小板減少性紫斑病患者 24 人中,20 人が重度で,4 人は急性発症期において中等度のプロテアーゼ欠損症であった.これらの患者の 20 人に認められた阻害物質は,調べた血漿サンプル 5 例中 5 例とも IgG であることが示された.非家族性溶血性尿毒症性症候群患者 13 人中 11 人は,急性発症期での von Willebrand 因子開裂プロテアーゼの活性が正常レベルであったが,患者 2 人では,活性はわずかに低下していた.家族性血栓性血小板減少性紫斑病患者では 6 人全員が von Willebrand 因子開裂プロテアーゼ活性を欠損していたが,阻害物質はなく,一方家族性溶血性尿毒症性症候群患者では 10 人全員がプロテアーゼ活性正常であった.プロテアーゼによる von Willebrand 因子の in vitro での蛋白質分解を,家族性の溶血性尿毒症性症候群患者 5 人および非家族性の同疾患患者 7 人において調べたが,12 人全員が正常であった.

結 論

非家族性血栓性血小板減少性紫斑病は,von Willebrand 因子開裂プロテアーゼの阻害物質が原因であるが,その家族性型はプロテアーゼの構成的な欠損が原因であると思われる.溶血性尿毒症性症候群患者は,von Willebrand 因子開裂プロテアーゼの欠損症ではなく,またプロテアーゼに対して耐性を示すようになるといった von Willebrand 因子の異常も示さなかった.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1998; 339 : 1578 - 84. )