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December 3, 1998 Vol. 339 No. 23

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同胞ドナーからの腎移植の生着に及ぼす遺伝していない母系 HLA 抗原に対する免疫寛容の効果
THE EFFECT OF TOLERANCE TO NONINHERITED MATERNAL HLA ANTIGENS ON THE SURVIVAL OF RENAL TRANSPLANTS FROM SIBLING DONORS

W.J. BURLINGHAM AND OTHERS

背景

妊娠および授乳期では,乳児の発育過程の免疫系は,母親の抗原に常に曝露されている.この曝露が,成人してから後に同種異系移植片を受ける患者に臨床的な利益となるか否かを明らかにするために,同胞ドナーからの一次腎移植の転帰を分析した.

方 法

1966~96 年に 9 ヵ所の施設において,レシピエントが受け継いでいない母系または父系 HLA 抗原を有する同胞ドナーから腎移植を受けた患者 205 人における移植片の生着と拒絶を後ろ向きに調べた.同胞ドナーは家族の HLA タイピングデータの分析によって分類した.

結 果

多施設分析において,移植後 5 年および 10 年での移植片の生着は,レシピエントが受け継いでいない母系 HLA 抗原を発現している同胞から腎を移植されたレシピエントでは,レシピエントが受け継いでいない父系の HLA 抗原を発現している同胞から腎を移植されたレシピエントより高かった(5 年で 86% 対 67%,10 年で 77% 対 49%;両比較について p= 0.006).逆に,前者の群では早期拒絶の発生率がより高く,このことは母系抗原に対する胎児および新生児期の曝露により免疫学的にプライミングされていることを示唆している.ドナー血液を移植前に輸血すると,遺伝していない母系抗原に対する免疫寛容が移植片の生着に及ぼす有用な作用を保持しながら,急性拒絶の発生率が減少した.1986 年以降は,新規免疫抑制薬剤によってレシピエントに遺伝していない母系の HLA 抗原を発現している移植片の短期生着への利益は減少したが,長期生着への利益は減少していない.

結 論

レシピエントと一つの HLA ハプロタイプがミスマッチである同胞ドナーからの腎移植では,移植片の生着は,レシピエントが遺伝していない母系の HLA 抗原をドナーが有する場合では,レシピエントが遺伝していない父系の HLA 抗原をドナーが有する場合より高い.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1998; 339 : 1657 - 64. )