Helicobacter pylori 菌感染症の根治は胃，または十二指腸潰瘍患者において有効である．潰瘍性疾患の証拠を有しない消化不良患者におけるこの感染症根治が有用であるか否かはわかっていない．

上部胃腸管内視鏡により潰瘍性疾患の証拠を認めない H. pylori 菌感染症患者における消化不良症状の寛解を目的として，オメプラゾール 20 mg の 1 日 2 回服用，アモキシシリン 500 mg の 1 日 3 回服用（ペニシリンアレルギーの患者には，アモキシシリンの代わりにテトラサイクリン 500 mg を 1 日 3 回投与する），およびメトロニダゾール 400 mg の 1 日 3 回服用による 2 週間の治療（患者 160 人）の有効性を，オメプラゾール単独（患者 158 人）の場合と比較する無作為プラセボ対照臨床試験を実施した．Glasgow 消化不良重症度スコアによって症状を評価し，判定前 6 ヵ月間でスコアがゼロまたは 1（最高スコア，20）であれば症状が寛解した，と定義した．1 年後，患者を評価して症状寛解率を決定した．

治療終了後 1 ヵ月では，H. pylori 菌の検査陰性となったのは，オメプラゾールと抗生物質群の患者では 150 人中 132 人（88%）であったのに対し，オメプラゾール単独群の患者では 152 人中 7 人（5%）であった．1 年後，消化不良は，オメプラゾールと抗生物質投与群では患者 154 人中 33 人（21%）において寛解したのに対し，オメプラゾール単独群で寛解したのは患者 154 人中 11 人（7%）であった（95%信頼区間，7～22%；p＜0.001）．オメプラゾールと抗生物質投与群の患者では，症状の持続が 5 年以下であった 98 人中 26 人（27%）において症状が寛解したのに対し，症状の持続が 5 年を超えた患者 56 人では寛解したのは 7 人（12%）であった（p＝0.03）．

非潰瘍性または機能的消化不良の H. pylori 菌感染患者では，感染症の根治を目的としたオメプラゾールと抗生物質による治療は，オメプラゾール単独による治療より症状が寛解する可能性が高い．