September 3, 1998 Vol. 339 No. 10
慢性膵炎患者における嚢胞性線維症遺伝子変異
MUTATIONS OF THE CYSTIC FIBROSIS GENE IN PATIENTS WITH CHRONIC PANCREATITIS
N. SHARER AND OTHERS
嚢胞性線維症の膵臓病変は胎児期に発症し,慢性膵炎の病変に酷似している.したがって,われわれは,慢性膵炎患者では,嚢胞性線維症膜通過伝導制御子(CF TR)遺伝子の変異は,予想より頻繁に起るかもしれないという仮説を立てた.
一連の慢性膵炎患者 134 人(アルコール性膵炎 71 人,副甲状腺機能亢進症 2 人,高トリグリセリド血症 1 人,特発性膵炎 60 人)を調べた.イングランド北西部の嚢胞性線維症患者が有する全変異の 95%を占める CF TR 遺伝子の 22 の変異について,DNA を調べた.また,配列が短くなれば正常な CFTR メッセンジャー RNA の比率が低下するため,イントロン 8 におけるチミジンの非コード配列の長さも測定した.
男性患者 94 人および女性患者 40 人の年齢は,16~86 歳であった.CF TR 遺伝子の両コピーに変異を有する患者はなかった.一つの染色体に CF TR 変異を有したのは,アルコール依存症でない 12 人を含めた 18 人(13.4%)であったが,これに対し,嚢胞性線維症の家族歴を有する人の非血縁パートナー 600 人における頻度は 5.3%であった(p<0.001).イントロン 8 に 5T 対立遺伝子を有していたのは 10.4%(134 人中 14 人)で,期待値の 2 倍であった(p = 0.008).4 人は CF TR 変異と 5T 対立遺伝子の双方に対してヘテロ接合であった.CF TR 変異を有する患者は,変異を有しない患者より年齢が低かった(p = 0.03).嚢胞性線維症の一部に認められる,副鼻腔-肺疾患,汗の電解質高値,上皮間電位差低値を有する患者はいなかった.
CF TR 遺伝子の変異および 5T 遺伝子型は,慢性膵炎に関連する.