ガンシクロビルの眼内注入治療を受けたサイトメガロウイルス網膜炎の患者に対するガンシクロビルの経口投与
Oral Ganciclovir for Patients with Cytomegalovirus Retinitis Treated with a Ganciclovir Implant
D.F. MARTIN AND OTHERS
ガンシクロビルの眼内注入は,後天性免疫不全症候群(AIDS)の患者におけるサイトメガロウイルス網膜炎の局所療法としては有効であるが,サイトメガロウイルス感染症によって発現する他の全身症状を治療あるいは予防することはできない.
AIDS に片眼のサイトメガロウイルス網膜炎を併発していた 377 例の患者を,次の三つの治療の一つに無作為に割り付けた:ガンシクロビルの注入とガンシクロビル経口投与(1 日用量 4.5 g)の併用治療,ガンシクロビルの注入とプラセボ経口投与の併用治療,ガンシクロビルの静脈内投与の単独治療.治療結果の主要評価項目は,サイトメガロウイルスの新病変の出現,すなわち対眼の網膜炎あるいは生検で確認された眼球外病変のいずれかの出現であった.
6 ヵ月目までの時点におけるサイトメガロウイルスの新病変の累積発生率は,ガンシクロビルの注入とプラセボの併用治療に割り付けられた患者群では 44.3%であったのに対して,ガンシクロビルの注入とその経口投与の併用治療に割り付けられた患者群では 24.3%(p=0.002),ガンシクロビルの静脈内投与単独治療に割り付けられた患者群では 19.6%(p<0.001)であった.被験者全員を対象とする解析では,ガンシクロビルの経口投与は,プラセボと比較して,試験の 1 年目までにサイトメガロウイルスの新病変が発生するリスクを 37.6%低下させた(p=0.02).しかしながら,プロテアーゼ阻害薬を服薬していた 103 例の患者の亜集団を対象とした解析では,サイトメガロウイルスの新病変の発生率は,治療割付けにはかかわらず,どの治療群でも低く,同程度であった.試験開始時に注入が行われた眼球側の網膜炎の進行は,プラセボと比較して,ガンシクロビルの経口投与を追加することによって遅くなった(p=0.03).カポジ肉腫のリスクは,プラセボと比較して,ガンシクロビルの経口投与あるいは静脈内投与の治療によって,それぞれ 75%(p=0.008)および 93%(p<0.001)低下した.
AIDS にサイトメガロウイルス網膜炎を併発している患者では,ガンシクロビルの注入にガンシクロビルの経口投与を併用することによって,サイトメガロウイルスの新病変の発生率が低下し,網膜炎の進行も減速する.さらに,ガンシクロビルの経口または静脈内投与の治療によって,カポジ肉腫のリスクも低下する.