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April 29, 1999 Vol. 340 No. 17

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多嚢胞性卵巣症候群における D-chiro-イノシトールの排卵および代謝作用
Ovulatory and Metabolic Effects of D-Chiro-Inositol in the Polycystic Ovary Syndrome

J.E. NESTLER, D.J. JAKUBOWICZ, P. REAMER, R.D. GUNN, AND G. ALLAN

背景

多嚢胞性卵巣症候群の女性では,インスリン抵抗性と高インスリン血症が認められるが,D-Chiro-イノシトールを含有しインスリンの作用を媒介するホスホグルカンの欠乏が関与している可能性がある.そこで,われわれは,D-Chiro-イノシトールの投与によって,媒介物質の貯蔵が補充されて,インスリンの感受性が改善されるのではないかという仮説をたてた.

方 法

多嚢胞性卵巣症候群の 44 例の肥満女性を対象として,1,200 mg の D-Chiro-イノシトールまたはプラセボの 1 日 1 回,6~8 週間の経口投与前およびあとに,血清ステロイドの測定および経口ブドウ糖負荷試験を実施した.血清中のプロゲステロン濃度は,排卵のモニターのために 1 週間隔で測定した.

結 果

D-Chiro-イノシトールの投与を受けた 22 例の女性では,グルコースを経口投与したときのインスリンの血漿中濃度時間曲線下面積(AUC)の平均値(±SD)が,13,417±11,572 μU/mL/分~5,158 ± 6,714 μU/mL/分(81±69 nmol/L/分~31±40 nmol/L/分)に低下した(p = 0.007;この変化をプラセボ群の変化と比較したときには p = 0.07);耐糖能には有意な変化は認められなかった.これらの 22 例の女性の血清遊離テストステロン濃度は,1.1±0.8 ng/dL~0.5±0.5 ng/dL(38±28 pmol/L~17±17 pmol/L)に低下した(プラセボ群の変化との比較で p = 0.006).また,これらの女性では,拡張期および収縮期血圧が 4 mmHg 下降し(プラセボ群の変化との比較で,それぞれ p<0.001 および p = 0.05),血漿トリグリセリド濃度も 184±88 mg/dL~110±61 mg/dL(2.1±0.2 mmol/L~1.2±0.1 mmol/L)に低下した(プラセボ群の変化との比較で p = 0.002).プラセボ群では,これらの変数のどれにも明らかな変化は認められなかった.排卵については,D-chiro-イノシトールの投与を受けた女性の 22 例中 19 例に認められたのに対して,プラセボ群では 22 例中の 6 例に認められただけであった(p<0.001).

結 論

多嚢胞性卵巣症候群の患者において,D-Chiro-イノシトールは,インスリンの作用を増大させることによって,排卵機能を改善させるとともに,血清アンドロゲン濃度,血圧,および血漿トリグリセリド濃度を低下させる.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1999; 340 : 1314 - 20. )