ステント-グラフト植込みによる胸部大動脈解離の非外科的再建
Nonsurgical Reconstruction of Thoracic Aortic Dissection by Stent–Graft Placement
C.A. NIENABER AND OTHERS
胸部大動脈解離の治療は,予後および解剖学的情報によって左右される.近位の解離には手術が必要であるが,遠位の胸部大動脈解離については,手術では予後が改善されていないことから,その適切な治療は確定されていない.
下行(B 型)大動脈解離の 12 例の連続した患者を対象として,選択的血管内腔ステント–グラフトの経血管的挿入の安全性と有効性をプロスペクティブに評価し,これらの患者とマッチした 12 例の対照患者の手術成績と比較した.この 24 例の患者すべての大動脈解離の診断は,磁気共鳴血管造影法によって行われた.どちらの群も,解離が大動脈弓部にまで及んでいた患者は 3 例で,下行胸部大動脈の解離は 12 例の全患者に認められた.患者には,全身麻酔のもとで,解離部分の外科的切除を行うか,あるいは患者に合わせて設計された血管内腔ステント–グラフトの植込みを片側動脈切開によって行った.
ステント–グラフトの植込みによる合併症の発症や死亡はなかったが,B 型解離の手術では,術後 12 ヵ月以内に,4 件の死亡(33%,p=0.09)と 5 件の重篤な有害事象(42%,p=0.04)が認められた.ステント–グラフトの経血管的設置は,すべての患者で成功し,どこからも漏れは認められなかった;ステントの完全な拡大は,バルーンを 2~3 気圧で膨らませて確認した.解離口の閉鎖は,経食道超音波法および血管造影法による各手技中にモニターした.偽腔の閉塞は,12 例すべてにおいて磁気共鳴画像法(MRI)にて平均で 3 ヵ月後に確認された.ステント–グラフト植込み群には,死亡した患者や,対麻痺,発作,塞栓形成,側枝の閉塞,感染症が発現した患者はいなかった;9 例に,軽度の白血球増多を伴った C 反応性蛋白(CRP)および体温の一過性の上昇といった移植後症候群が認められた.ステント–グラフトの植込みを受けた患者は,すべての患者で,B 型解離の手術を受けた患者の 7 例(58%)と同様の回復が認められた(p=0.04).
今回の予備検討の結果では,胸部大動脈解離で手術適応の患者の一部では,選択的血管内腔ステント–グラフトの非外科的挿入が安全かつ有効であることを示唆している.胸部大動脈解離の介入的再建には,動脈の内腔の修復が有用なのかもしれない.