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May 20, 1999 Vol. 340 No. 20

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急性大動脈解離の治療としての血管内腔ステント-グラフトの植込み
Endovascular Stent–Graft Placement for the Treatment of Acute Aortic Dissection

M.D. DAKE AND OTHERS

背景

急性大動脈解離の標準治療は,外科的または内科的療法のいずれかであるが,病変の形態学的特徴と解離に関連した合併症に依存する.しかし,いずれの治療法を選択しても,相当の死亡と障害が伴う.

方 法

下行胸部大動脈に解離口がある急性大動脈解離の管理において,原発解離口を被うような血管内腔ステント–グラフト植込みについての検討を行った.すなわち,A 型急性大動脈解離(解離が上行大動脈にまで及んでいる)の患者 4 例と,B 型急性大動脈解離(解離が下行大動脈に限局している)の患者 15 例を対象として,解離口を被う経血管的ステント–グラフト植込みの臨床適用の可能性,安全性,および有効性について評価した.これらの 19 例の患者のうち,14 例(74%)は解離が大動脈分枝にまで及び,7 例(37%)には複数の分枝血管の症候性病変が観察された.使用したステントグラフトは,自動拡大型のステンレス鋼製で,ポリエステルまたはポリテトラフルオロエチレンの素材による網で被われものであった.

結 果

原発解離口を被うような血管内腔ステント–グラフト植込みは,手技的には,19 例のすべての患者で成功した.胸部大動脈の偽腔の完全な閉塞が 15 例(79%)の患者に,部分的な閉塞が 4 例(21%)の患者に認められた.虚血状態の分枝血管の血行再建は,その再建に対応した症状の軽減を伴って,閉塞分枝の 76%に認められた.19 例の患者のうちの 3 例が設置後 30 日目までに死亡し,その早期死亡率は 16%であった(95%信頼区間,0~32%).それ以降は,平均で 13 ヵ月の追跡調査期間中に,死亡患者および動脈瘤や大動脈破裂が発現した患者は 1 例もいなかった.

結 論

今回の臨床適用初期の成績から,ステント–グラフト植込みによる原発解離口の閉鎖が,急性大動脈解離の患者の一部に対する有望な新しい治療法となる可能性が示唆された.しかしながら,この治療手技には,その治療上の可能性を充分に検討するために,さらなる評価が必要である.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1999; 340 : 1546 - 52. )