January 21, 1999 Vol. 340 No. 3
ホームレス患者における慢性 Bartonella quintana 菌血症
CHRONIC BARTONELLA QUINTANA BACTEREMIA IN HOMELESS PATIENTS
P. BROUQUI, B. LASCOLA, V. ROUX, AND D. RAOULT
Bartonella quintana 感染症は,塹壕熱,心内膜炎,細菌性血管腫症,および紫斑病を引こき起すことがある.B. quintana による菌血症の発生がシアトルのホームレスの人々において報告されており,この血清学的に検出される罹患率は米国と欧州のどちらのホームレスの人々においても高い.キモノジラミが B. quintana を媒介していることは知られている.
1997 年に,フランスのマルセイユにある大学病院の救急部門を受診したホームレスの全例に対して調査を行った.B. quintana の抗体の微量免疫蛍光検査および細菌培養のために血液を採取した.キモノジラミを採取し,B. quintana のクエン酸縮合酵素の遺伝子の部分を,ポリメラーゼ連鎖反応(PCR 法)および DNA 配列決定法を用いて分析した.
71 例のホームレス患者のうち 10 例(14%)が血液培養で B. quintana 陽性であった.また,患者の 21 例(30%)は B. quintana の抗体価が上昇していた.全体で 17 例(24%)の患者に,最近感染したことを示すような証拠が認められた(菌血症またはセロコンバージョン).キモノジラミを採取した 15 例の患者のうち 3 例でのシラミの検査結果は,B. quintana 陽性であった.B. quintana 菌血症を発症していたホームレスの人々は,B. quintana がセロネガティブ(血清中の特異抗体が陰性)で菌血症を発症していなかったホームレスの人々よりも,シラミと接触しやすく(p=0.002),頭痛が起こりやすく(p=0.03),重症の脚の疼痛があり(p<0.001),血小板数が少なかった(p=0.006); 菌血症の 10 例の患者のうち 8 例は無熱であった.5 例の患者は,血液培養が数週間にわたり陽性であり,慢性の菌血症であった.
マルセイユのホームレスの人々における都市型の塹壕熱の発生においては,B. quintana 感染症は,非特異的な症状あるいは無症状の患者に寄生していたキモノジラミと関連が あった.