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March 4, 1999 Vol. 340 No. 9

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高齢者入院患者におけるせん妄予防のための多因子介入
A Multicomponent Intervention to Prevent Delirium in Hospitalized Older Patients

S.K. INOUYE AND OTHERS

背景

高齢者の入院患者ではせん妄が不良な転帰に関連しているので,われわれは,せん妄を予防するための複数のリスク因子に対して介入を行う多因子戦略の有効性を評価した.

方 法

教育病院の一般の医療サービスに入院していた 70 歳以上の患者 852 例を対象として試験を行った.プロスペクティブに患者をマッチングさせていくという方法を用いて,介入病室 1 ユニットに対して通常ケア病室の 2 ユニットの患者を試験に登録した.本試験の介入は,せん妄の以下の六つのリスク因子を管理するための標準プロトコールで構成されたものであった:認知障害,睡眠遮断,不動性,視覚障害,聴覚障害,および脱水.せん妄を介入の主要転帰として,これを退院まで毎日評価した.

結 果

せん妄の発現は,介入群では 9.9%であったのに対して,通常ケア群では15.0%であった(マッチさせたオッズ比,0.60;95%信頼区間,0.39~0.92).せん妄の総発現日数(105 対 161,p=0.02)およびエピソードの総発現件数(62 対 90,p=0.03)は,介入群で有意に少なかった.しかしながら,せん妄の重症度と再発率には有意な差は認められなかった.全体の介入遵守の割合は 87%であり,患者当りの標的リスク因子の総数は有意に減少した.介入は,入院時に認知障害が発現していた患者では認知障害の程度の有意な改善と関連し,全患者では睡眠薬の使用率の有意な減少と関連していた.これら以外のリスク因子に関しては,不動性,視覚障害,および聴覚障害に改善傾向が認められた.

結 論

今回,われわれが検討したリスク因子に対する介入戦略によって,高齢者の入院患者におけるせん妄のエピソードの発現件数と発現期間を有意に減少させるという結果が得られた.しかしながら,この介入は,せん妄の重症度や再発率に対しては有意な効果がなかった;すなわち,今回の試験結果は,おそらく,せん妄の第一次予防がもっとも有効な治療戦略であろうということを示すものである.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1999; 340 : 669 - 76. )