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January 14, 1999 Vol. 340 No. 2

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感染症のあるイヌおよびネコによる咬創の細菌学的分析
BACTERIOLOGIC ANALYSIS OF INFECTED DOG AND CAT BITES

D.A. TALAN, D.M. CITRON, F.M. ABRAHAMIAN, G.J. MORAN, AND E.J.C. GOLDSTEIN

背景

犬咬傷・猫咬傷による感染症への細菌の関与を明らかにするために,18 施設の救急部門で前向き試験を実施した.

方 法

患者が試験への登録に適格である条件は,咬傷による感染の三つの大項目(発熱,膿瘍,リンパ管炎)の 1 項目,あるいは五つの小項目(創傷部の紅斑,創傷部位の圧痛,創傷部の腫脹,排膿,白血球増加)の 4 項目を満たすことであった.創傷の検体は,微生物学研究所,場合によっては病院の検査室で,好気性菌および嫌気性菌の培養が行われた.

結 果

基準とした研究所では,犬咬傷患者 50 例と猫咬傷患者 57 例の感染創から,培養当りの中央値で 5 株(範囲,0~16 株)の細菌が分離された.病院の検査室(中央値,1 株;範囲,0~5 株;p<0.001)よりも委託試験所で,有意に多い細菌が分離された.好気性菌と嫌気性菌の両方の分離は創傷の 56%から,好気性菌のみの分離は 36%から,嫌気性菌のみの分離は 1%からであった;7%の培養からは細菌は分離されなかった.犬咬傷(50%)と猫咬傷(75%)の両方からもっとも多く分離されたのは,パスツレラ属であった.犬咬傷でもっとも多く分離された細菌は Pasteurella canis で,猫咬傷でもっとも多く分離された細菌は Past. multocida の亜種である multocidaseptica であった.これら以外で多く認められた好気性菌は,連鎖球菌属,ブドウ球菌属,モラクセラ属,ナイセリア属などであった.嫌気性菌で多かったのは,フゾバクテリウム属,バクテロイデス属,ポルフィロモナス属,プレボテラ属などであった.これまでにヒトの病原菌として同定されていない分離菌には,猫咬傷の 2 件から分離された Reimerella anatipestifer と,犬咬傷・猫咬傷から分離された Bacteroides tectumPrevotella heparinolytica,数種類の porphyromonas(ポルフィロモナス)属があった.Erysipelothrix rhusiopathiae が 2 件の猫咬傷から分離された.患者は,微生物学的知見に基づいた適切な治療法である β-ラクタム系の抗生物質と β-ラクタマーゼ阻害薬の併用で治療されることがもっとも多かった.

結 論

感染した犬猫による咬傷には,通常,パスツレラ属を含む複数の微生物が混在しているが,さらに,臨床の微生物学研究所では日常的には同定されない多くの細菌や,咬傷の創傷病原体として今までに認められていない多くの細菌も含まれている可能性がある.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1999; 340 : 85 - 92. )