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September 30, 1999 Vol. 341 No. 14

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ミトコンドリア DNA のシトクロム b 遺伝子の突然変異による運動不耐性
Exercise Intolerance Due to Mutations in the Cytochrome b Gene of Mitochondrial DNA

A.L. ANDREU AND OTHERS

背景

ミトコンドリアミオパシーは,一般には数多くの器官系を冒し,母性遺伝のミトコンドリア DNA(mtDNA)の突然変異と関連がある.しかしながら,運動不耐性が主徴となっている散発性のミトコンドリアミオパシーも存在する.今回,われわれは,このような散発性ミオパシーの生化学的および分子学的特性を検討した.

方 法

重症の運動不耐性,安静時の乳酸アシドーシス(4 例),および複合体 III(ユビキノール–シトクロム c 還元酵素)欠損の生化学的知見が認められた 5 例の患者から,血液および筋肉検体を採取し,mtDNA のシトクロム b 遺伝子の塩基配列を決定した.患者の臨床および分子学的な特性を,これらの患者とは別のシトクロム b 遺伝子突然変異の保因患者においてすでに報告されている特性と比較した.

結 果

5 例のシトクロム b 遺伝子には,合計で 3 種類のナンセンス変異(G15084A,G15168A,および G15723A),一つのミスセンス変異(G14846A),および 24-塩基対の欠失(ヌクレオチド 15498~15521)が検出された.これらおのおのの突然変異では,シトクロム b 蛋白の酵素機能が損なわれている.これらの患者とすでに報告されていた患者に顕在化していた臨床特徴は,進行性の運動不耐性と近位肢の虚弱などであったが,患者によってはミオグロビン尿症の発症も認められた.母性遺伝を示すような根拠は得られず,この突然変異は筋肉以外の組織には認められなかった.このような知見の欠如は,この疾患が,胚葉分化以降に生じた筋原幹細胞の体細胞突然変異によるものであることを示唆している.これらすべての点突然変異にはグアニンのアデニンへの塩基置換が認められたが,この置換部位はすべて異なっていた.

結 論

散発性のミトコンドリアミオパシーは,mtDNA のシトクロム b 遺伝子の体細胞突然変異に関連したものである.このミオパシーは,一般的だが定義しがたいことがしばしばある運動不耐性症候群の原因の一つである.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1999; 341 : 1037 - 44. )