November 18, 1999 Vol. 341 No. 21
米国の男性医師における軽度から中等度の飲酒と脳卒中のリスク
Light-to-Moderate Alcohol Consumption and the Risk of Stroke among U.S. Male Physicians
K. BERGER AND OTHERS
いくつかの研究において,飲酒と脳卒中のリスクとのあいだに U 字型および J 字型の関連があることが示されている.そこで,われわれは,軽度から中等度のアルコール摂取が脳卒中のリスクに与える影響を評価するとともに,虚血性脳卒中と出血性脳卒中をわけた解析も行った.
今回の解析は,医師の健康研究(the Physicians' Health Study)に参加していた 40~84 歳までの男性医師,22,071 例の前向きコホート研究に基づいて行った.この健康研究への参加者は,開始時点において,脳卒中,一過性脳虚血発作,あるいは心筋梗塞の病歴がなく,癌にも罹患していないと報告していた.アルコール摂取については,開始時点に 21,870 例の参加者から報告されていたが,アルコール摂取量の範囲はまったくあるいはほとんど飲まないから 1 日に 2 杯以上飲酒するまでであった.
平均で 12.2 年間の追跡調査期間中に,679 件の脳卒中が報告された.1 週間に 1 杯未満しか飲酒していなかった参加者と比較すると,それ以上飲酒していた参加者では,脳卒中全体のリスクが低下しており(相対危険度,0.79;95%信頼区間,0.66~0.94),虚血性脳卒中のリスクも低下していた(相対危険度,0.77;95%信頼区間,0.63~0.94).飲酒と出血性脳卒中とのあいだには,統計学的に有意な関連は認められなかった.1 週間に 1 杯,1 週間に 2~4 杯,1 週間に 5~6 杯,1 日に 1 杯以上飲酒していた男性の脳卒中全体の相対危険度は,脳卒中の主要な危険因子を補正した解析では,それぞれ 0.78(95%信頼区間,0.59~1.04),0.75(95%信頼区間,0.58~0.96),0.83(95%信頼区間,0.62~1.11),および 0.80(95%信頼区間,0.64~0.99)であった.
軽度から中等度の飲酒は,男性において,脳卒中全体のリスクを低下させるとともに,虚血性脳卒中のリスクも低下させる.この有益性は,1 週間に 1 杯程度の少量の飲酒において明らかに認められる.摂取量をさらに多くしても,1 日に 1 杯の飲酒までにおいては,今回認められた有益性が増大するというようなことはない.