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December 30, 1999 Vol. 341 No. 27

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特発性慢性心膜液貯留の長期追跡調査
Long-Term Follow-up of Idiopathic Chronic Pericardial Effusion

J. SAGRISTÀ-SAULEDA, J. ANGEL, G. PERMANYER-MIRALDA, AND J. SOLER-SOLER

背景

大量の特発性慢性心膜液貯留は,3 ヵ月を超えて持続する心膜液の貯留であり,その明らかな原因は不明である.今回,われわれは,この障害の自然経過と治療に関するプロスペクティブな研究を実施した.

方 法

1977~92 年の期間に,患者の評価を行い,大量の特発性慢性心膜液貯留が認められた患者を本研究の対象とした.これらの患者のほとんどに心膜穿刺を行った.心膜切除術については,心膜穿刺後に大量の心膜液が再貯留した場合に実施した.追跡調査期間は 18 ヵ月~20 年間であった(中央値,7 年間).

結 果

本試験の期間中に,合計で 1,108 例の心膜炎患者の評価を行い,そのうちの 461 例に大量の心膜液貯留が確認された.これらの患者のうちの 28 例(年齢の範囲,7~85 歳;中央値,61 歳)には,特発性の慢性的な大量の貯留が認められたので,本研究の対象とした.貯留が認められた期間は 6 ヵ月~15 年間であった(中央値,3 年間).初回評価時点において,13 例は無症状であった.8 例(29%)の患者には明らかなタンポナーデが認められた.24 例の患者には治療目的での心膜穿刺を行ったが,これによって 8 例の患者では心膜液貯留の消失または著しい減少が得られた.心膜穿刺を受けた 24 例の患者うち,5 例には早い段階での心膜切除術を行い,残りの 11 例には大量の心膜液の再貯留が認められた.心カテーテル法を 16 例の患者に実施したが,これによって,心膜穿刺の実施前には,心膜腔内圧が上昇し(平均 [±SD],4.75±3.79 mmHg),壁圧が低下(1.0±2.50 mmHg)していたことが示された.これらの圧の異常は,心膜穿刺後には有意に改善した.心膜切除術は,20 例の患者に行われたが,これによって優れた長期成績が得られた.追跡調査期間の終了時点において,10 例の患者が死亡していたが,心膜疾患によって死亡した患者は 1 例もいなかった.

結 論

大量の特発性慢性心膜液貯留は,そのほとんどの患者が,長期間にわたってよく耐えられるものであるが,いつでも重症のタンポナーデが突然に起る可能性がある.心膜穿刺だけでも,大量の心膜貯留が消失するという結果が得られることもしばしばあるが,再貯留することも多く,心膜穿刺後に大量の貯留が再び現れた場合には,常に心膜切除術を考えるべきである.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1999; 341 : 2054 - 9. )