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July 1, 1999 Vol. 341 No. 1

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若年層の患者において僧帽弁逸脱と脳卒中とが関連するという根拠の欠如
Lack of Evidence of an Association between Mitral-Valve Prolapse and Stroke in Young Patients

D. GILON AND OTHERS

背景

これまでの試験において,塞栓性脳卒中の患者,とくに若年層の患者で(≦45 歳),僧帽弁逸脱の有病率が高いことが報告されている(28~40%);この試験結果には,予防のための臨床的な意味あいが含まれている.しかしながら,僧帽弁逸脱の診断基準は変化していて,今日では,弁の形状の三次元分析に基づいたものになっている;現在一般に認められている基準を用いると,この僧帽弁逸脱の診断頻度は著しく低下するとともに,その特異度が増加している.したがって,これまでに述べられてきた合併症についても,再検討しなければならない.

方 法

症例対照研究において,1985~95 年に虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作の診断が記録されていた 45 歳以下の連続した患者,213 例のデータの再調査を行った;これらの患者では,神経学的評価と心エコー図の評価がすべて完全に行われていた.これらの患者における僧帽弁逸脱の有病率を,心疾患の既往や現病歴がなく,化学療法を受ける前の心室機能評価のために当施設に紹介されてきた 263 例の対照被験者と比較した.

結 果

僧帽弁逸脱は,若年層の脳卒中患者では 213 例中の 4 例(1.9%)に,対照被験者では 263 例中の 7 例(2.7%)に認められた;その他の原因不明の脳卒中の患者では,71 例中の 2 例(2.8%)に僧帽弁逸脱が認められた.脳卒中が起きなかった患者と比較すると,脳卒中が起きた患者における僧帽弁逸脱の粗オッズ比は,0.70(95%信頼区間,0.15~2.80;p=0.80)であった;年齢および性別で補正すると,オッズ比は 0.59(95%信頼区間,0.12~2.50;p=0.62)になった.

結 論

原因不明の脳卒中も含めて,脳卒中や一過性脳虚血発作の若年患者における僧帽弁逸脱の頻度は,これまでの報告よりかなり低く,また対照群の頻度よりも高くない.それゆえ,特異度が高く,現在広く認められている心エコー図の診断基準を用いると,若年層の人々においては,僧帽弁逸脱の存在と急性の虚血性神経学事象との関連を示すことはできなかった.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1999; 341 : 8 - 13. )