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September 23, 1999 Vol. 341 No. 13

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エンテロウイルス 71 感染症患児における神経合併症
Neurologic Complications in Children with Enterovirus 71 Infection

C.-C. HUANG AND OTHERS

背景

エンテロウイルス 71 への感染は,幼い小児に手足口病を引き起す.この疾患は,数日間の発熱および嘔吐,口腔粘膜の潰瘍性病変,および手足の背側の水疱が特徴である.この疾患は初期の段階では軽快するが,ときに,無菌性髄膜炎,脳脊髄炎,あるいは麻痺性急性灰白髄炎様の急性弛緩性麻痺さえも続発することがある.

方 法

今回,われわれは,1998 年に台湾で発生したエンテロウイルス 71 の流行に関連した神経合併症について報告する.三つの主幹病院において,培養にてエンテロウイルス 71 の感染が特定され,急性神経症状が顕在化していた 41 例の小児を対象とした.磁気共鳴映像法(MRI)による検査を,急性弛緩性麻痺の患児 4 例と菱脳炎の患児 24 例に実施した.

結 果

患児の平均年齢は 2.5 歳(範囲,生後 3 ヵ月~8.2 歳)であった.このうち 28 例(68%)が手足口病,6 例(15%)がヘルパンギーナを発症していた.残りの 7 例には皮膚病変や粘膜病変は認められなかった.また,3 種類の神経症候群が鑑別された:無菌性髄膜炎(3 例);脳幹脳炎または菱脳炎(37 例);急性弛緩性麻痺(4例)で,この急性弛緩性麻痺のうちの 3 例は菱脳炎に続発したものであった.菱脳炎の患児については,20 例が,ミオクローヌス様単収縮および振戦,運動失調,あるいはこれらの両症状が特徴の症候群であった(グレード I の病状).10 例には,ミオクローヌスおよび脳神経症状が認められた(グレード II の病状).残りの 7 例には,脳幹感染による一過性のミオクローヌスに続いて,急速に,呼吸窮迫,チア ノーゼ,末梢灌流不良,ショック,昏睡,人形の目反射の喪失,および無呼吸が発現していた(グレード III の病状);グレード III の 5 例は入院後 12 時間以内に死亡した.MRI の検査を受けた菱脳炎の 24 例のうちの 17 例には,T2 強調スキャンによって,脳幹に,もっとも一般的には脳橋の橋被蓋に,高信号域病変が認められた.追跡調査時には,急性弛緩性麻痺の 2 例に後遺症の四肢虚弱が残存しており,菱脳炎の 5 例には,ミオクローヌス(1 例),脳神経障害(2 例),および人工呼吸器を必要とする無呼吸症(2 例)などの持続性神経障害が認められた.

結 論

1998 年の台湾におけるエンテロウイルス 71 の流行では,主要な神経合併症は菱脳炎であった.そして,この合併症の致死率は 14%であった.もっとも一般的に認められた初期症状はミオクローヌス様単収縮で,MRI によって脳幹を巻き込んだ病変像が一般的に認められた.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1999; 341 : 936 - 42. )