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May 25, 2000 Vol. 342 No. 21

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胸骨圧迫の単独または口対口換気との併用による心肺蘇生
Cardiopulmonary Resuscitation by Chest Compression Alone or with Mouth-to-Mouth Ventilation

A. HALLSTROM, L. COBB, E. JOHNSON, AND M. COPASS

背景

シアトル市民は心肺蘇生法(CPR)の広範な訓練を受けているにもかかわらず,目撃者の居合わせた心停止のほぼ半数において,その居合わせた人たちは CPR を行っていない.救急車の受付者が電話で行う胸骨圧迫+口対口換気の指示には,2.4 分間の時間を要する.試験的研究においては,胸骨圧迫だけでも,胸骨圧迫と口対口換気との併用と同程度の生存率が得られている.そこで,われわれは,今回の無作為試験を実施し,胸骨圧迫単独による CPR と胸骨圧迫と口対口換気との併用による CPR の比較を行った.

方 法

本試験の試験環境としては,ある都市部の,消防署が基盤となって中央管理による救急車の出動体制がとられている救急医療システムを選択した.無作為化の方法で,電話を受けた救急車の受付者が,明らかな心停止の現場に居合わせた者に,胸骨圧迫のみの指示あるいは胸骨圧迫+口対口換気の指示のいずれかを与えた.主要エンドポイントは生存退院であった.

結 果

胸骨圧迫の単独蘇生に無作為に割り付けられた 241 例の患者と,胸骨圧迫+口対口換気の併用蘇生に割り付けられた 279 例の患者のデータを解析した.指示を完全に伝えることができたのは,胸骨圧迫+口対口換気の併用蘇生群ではエピソードの 62%,胸骨圧迫の単独蘇生群ではエピソードの 81%であった(p = 0.005).胸骨圧迫の指示を完全に伝えるために要した時間は,胸骨圧迫+口対口換気の指示よりも 1.4 分間少なかった.退院までの生存については,胸骨圧迫の単独蘇生に割り付けられた患者が,胸骨圧迫+口対口換気の併用蘇生に割り付けられた患者よりも優れていたが(14.6% 対 10.4%),この生存率の差は統計学的に有意ではなかった(p = 0.18).

結 論

胸骨圧迫単独による CPR の転帰は,口対口換気を併用した蘇生法による転帰と同様なので,CPR の実施経験がない者へのアプローチとしては,胸骨圧迫単独の方法を優先すべきであろうと考えられる.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2000; 342 : 1546 - 53. )