重症冠動脈疾患の男性におけるシルデナフィルの血行動態に及ぼす作用
Hemodynamic Effects of Sildenafil in Men with Severe Coronary Artery Disease
H.C. HERRMANN, G. CHANG, B.D. KLUGHERZ, AND P.D. MAHONEY
勃起不全の男性はしばしば基礎に心疾患が存在しているということから,また,シルデナフィルの使用との関連があるかもしれない重篤な心イベントを指摘する報告があることから,シルデナフィルの心血管系に対する作用には重要な意味がある.
冠動脈の少なくとも 1 枝に高度の狭窄(血管径の>70%の狭窄)が存在し,経皮的冠動脈血行再建術を受ける予定になっていた 14 例の男性(平均 [±SD] 年齢,61±11 歳)を対象として,シルデナフィル(100 mg)を経口投与したときの全身動脈,肺動脈,および冠動脈の血行動態におよぼす作用について評価した.血流速度と血流予備能については,高度狭窄病変動脈 13 枝(平均の狭窄の程度,78±7%)と対照動脈として用いた非狭窄動脈 12 枝の計 25 枝の冠動脈において,ドプラーガイドワイヤーを用いて評価した;このとき,シルデナフィルの投与前後にアデノシンを冠動脈内に投与して,最大充血を誘導させた(血流予備能を評価するための誘導).
シルデナフィルの経口投与は,全身動脈圧および肺動脈圧をわずかに低下させただけで(<10%),肺動脈楔入圧(PCW),右房圧,心拍数,あるいは心拍出量に対しては何の作用も認められなかった.また,平均最高冠血流速度,冠動脈血管径,容積測定による冠血流量,あるいは冠血管抵抗にも,有意な変化は認められなかった.冠動脈血流予備能は,試験開始時には,対照動脈(2.19±0.44)よりも狭窄動脈(1.26±0.26)で低く,シルデナフィルの投与後には,狭窄動脈と非狭窄動脈を併せた全体で約 13%増加していた(1.70±0.59 から 1.92±0.72 への増加,p=0.003).また,対照動脈の冠動脈血流予備能に対する狭窄冠動脈の冠動脈血流予備能の比(0.57±0.14)にも,シルデナフィルによる影響は認められなかった.
重症冠動脈疾患の男性には,シルデナフィルの経口投与による有害な心血管系作用は何も検出されなかった.