ニュースメディアによる薬物療法の有益性とリスクに関する報道
Coverage by the News Media of the Benefits and Risks of Medications
R. MOYNIHAN AND OTHERS
ニュースメディアは,新しい医療についての重要な情報源の一つであるが,不正確であまりにも偏った報道になっているものがあるのではないかという懸念がある.
主要疾患の予防に用いられている三つの薬剤について,それらの有益性とリスクに関する米国のニュースメディアによる報道の調査を行った.今回調査した薬剤は,心血管疾患の予防に使用されているコレステロール低下薬であるプラバスタチン;骨粗鬆症の治療および予防に使用されているビスホスホネート製剤であるアレンドロン酸塩;そして心血管疾患の予防に使用されているアスピリンであった.1994~98 年に出された新聞記事 180 件(各薬剤 60 件)と,テレビ放送 27 件から成る系統的確率標本を解析した.
207 件の報道のうち,83 件(40%)は有益性を定量的に報告していなかった.有益性を定量的に報告していた 124 件のうち,103 件(83%)は相対的な有益性のみを報告し,3 件(2%)は絶対的な有益性のみを報告しており,絶対的な有益性と相対的な有益性の両方を報告していたのは残りの 18 件(15%)のみであった.207 件の報道のうち,患者に対する潜在的な有害作用に言及していたのは 98 件(47%),費用に言及していたのは 63 件(30%)のみであった.170 件の報道が専門家の意見や科学的な試験を引用していたが,そのうち 85 件(50%)が,製薬会社との金銭的な利害関係を科学文献中に公開している専門家の意見または研究を 1 件以上引用していた.この 85 件の報道のうち,金銭的な利害関係を公開していたのは 33 件(39%)のみであった.
薬物療法についてのニュースメディアの報道には,研究グループや専門家と製薬会社との金銭的な利害関係だけでなく,その薬剤の有益性,リスク,費用に関しても,不適切あるいは不完全な情報が含まれているかもしれない.