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June 29, 2000 Vol. 342 No. 26

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再発性静脈血栓塞栓症に対するワルファリンの予防療法後における癌の発生
Incidence of Cancer after Prophylaxis with Warfarin against Recurrent Venous Thromboembolism

S. SCHULMAN AND P. LINDMARKER

背景

静脈血栓塞栓症のエピソードが発生してからどの程度の期間,新規に診断される癌のリスクが上昇するのかは明らかでなく,ビタミン K 拮抗薬に抗腫瘍効果があるのかどうかということについても意見がわかれている.

方 法

静脈血栓塞栓症の初回エピソード後に行う経口抗凝固療法の期間(6 週間または 6 ヵ月間)の検討を目的として実施された前向き無作為化試験において,この試験に組み入れられた患者に,新たに癌と診断されたかどうかについての質問調査を年 1 回実施した.平均追跡調査期間は 8.1 年間で,これ以降の調査については,スウェーデンがん登録(Swedish Cancer Registry)を利用して,本試験の患者集団において癌の診断と死因をすべて特定した.癌に罹患した患者数の観察値を,国民全体の癌の罹患率に基づいて求めた期待値と比較し,その標準化罹患率比として算出した.

結 果

今回の追跡調査期間中にはじめて癌と診断された患者は,854 例中 111 例(13.0%)であった.新たに診断された癌の標準化罹患率比は,血栓塞栓症イベントから最初の 1 年間は 3.4(95%信頼区間,2.2~4.6)で,その後の 5 年間は 1.3~2.2 の範囲にとどまっていた.経口抗凝固療法を 6 週間受けた 419 例では,66 例(15.8%)が癌の診断を受けたのに対し,この治療を 6 ヵ月間受けた 435 例では 45 例(10.3%)が癌の診断を受けた(オッズ比,1.6;95%信頼区間,1.1~2.4).この差は,主に,初発の泌尿生殖器癌によるものであり,泌尿生殖器癌は,6 週間の治療群では 28 例(6.7%)に,6 ヵ月間の治療群では 12 例(2.8%)に発症していた(オッズ比,2.5;95%信頼区間,1.3~5.0).癌への罹患について治療群間に認められた差は,追跡調査の 2 年目以降に明らかになり,性別,年齢,および血栓塞栓症が特発性または非特発性であったかということで補正しても有意なままであった.また,静脈血栓塞栓症の発症時の年齢が高いことと,血栓塞栓症が特発性であることも,癌と診断されることの独立した危険因子であった.癌関連死の発生率に差は認められなかった.

結 論

静脈血栓塞栓症の初回エピソード後に新たに癌と診断されるリスクは,エピソード発生後少なくとも 2 年間は上昇している.それ以降は,このリスクは,経口抗凝固療法を 6 ヵ月間受けた患者のほうが,この治療を 6 週間受けた患者よりも低下しているようである.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2000; 342 : 1953 - 8. )