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January 27, 2000 Vol. 342 No. 4

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アポリポ蛋白質 E の遺伝型と再発性脳葉内出血のリスク
Apolipoprotein E Genotype and the Risk of Recurrent Lobar Intracerebral Hemorrhage

H.C. O'DONNELL AND OTHERS

背景

再発性の脳葉内出血は,脳アミロイド血管症の特徴である.脳葉内出血の早期再発を誘発させる要因はわかっていない.しかしながら,アポリポ蛋白質 E の対立遺伝子であるε2 とε4 の両方がアミロイド血管症の重症度と関連しているらしいということから,アポリポ蛋白質 E の遺伝子がこの要因の候補の一つと考えられている.

方 法

脳葉内出血を経験した一連の高齢患者を対象として,前向きの経時的観察研究を実施した.再発性の出血性脳卒中の追跡調査は,6 ヵ月間隔での面接調査と,医療記録およびコンピュータ断層撮影(CT)スキャンを詳細に検討することによって行った.

結 果

平均(±SD)で 23.9±14.8 ヵ月の追跡調査期間中に,本研究に参加した 71 例の患者のうち 19 例に再発性の出血が発現し,その 2 年累積再発率は 21%であった.アポリポ蛋白質 E の遺伝子型には,再発リスクとの有意な関連が認められた.すなわち,対立遺伝子ε2 またはε4 の保有者では,2 年再発率が 28%であったのに対して,アポリポ蛋白質 E の対立遺伝子頻度の高い遺伝子型であるε3/ε3 の患者では 10%にすぎなかった(リスク比,3.8; 95%信頼区間,1.2~11.6;p = 0.01).早期に再発した患者は 8 例であったが,そのうちの 4 例は頻度の低い遺伝子型であるε2/ε4 であった.また,本研究に参加する前に出血性脳卒中の既往があった患者は,再発のリスクが上昇していた(2 年再発率,61%;リスク比,6.4;95%信頼区間,2.2~18.5;p<0.001).

結 論

アポリポ蛋白質 E の遺伝型によって,脳葉内出血の早期再発のリスクがもっとも上昇している患者を識別することができる.今回得られた知見は,脳葉出血の患者への予後に関する情報の提供と,考えられる予防戦略の対象を絞り,評価を可能にするものである.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2000; 342 : 240 - 5. )