March 16, 2000 Vol. 342 No. 11
合併症のない急性心筋梗塞後の早期退院における費用効果
Cost Effectiveness of Early Discharge after Uncomplicated Acute Myocardial Infarction
L.K. NEWBY AND OTHERS
入院期間の短縮は短期的な医療費を削減することができるが,合併症のない心筋梗塞後の早期退院の臨床的および経済的な長期帰結に関するデータはほとんど得られていない.
閉塞冠動脈に対するストレプトキナーゼと組織プラスミノーゲンアクチベータ(tPA)の包括的使用(GUSTO-1:the Global Utilization of Streptokinase and Tissue Plasminogen Activator for Occluded Coronary)の試験のデータを利用して,血栓溶解療法後 72 時間のあいだに合併症が発症しなかった急性心筋梗塞の患者,22,361 例を同定した.続いて,決定分析モデルを用いて,この患者群で入院を 1 日延長することの費用効果を検討した.入院監視の 1 日延長による増分生存期間は,72 ~ 96 時間のあいだにおける心停止後の蘇生率に基づいて定義した.決定分析モデルの各患者群の寿命の生存曲線は,GUSTO-1 の 1 年生存データから推定した.
血栓溶解療法後 72 時間以内に合併症を発症しなかった患者のうち,16 例にはその後 24 時間のあいだに心室性不整脈が発現した:これらの患者の 13 例(81%)は,少なくとも 24 時間は生存していた.平均では,合併症が発症しなかった患者をもう 1 日入院させることによって救命される生存期間は,患者当り 0.006 年間であった.病院および医師の医療サービス費用が $ 624 の場合には,入院期間が 1 日延長すると,救命 1 年当りの医療費は $ 105,629 になる.感度分析では,医療費が 50%を越えて削減させる場合,あるいは生存の推定有益性が 2 倍になるような高リスク患者群を同定できる場合に限り,4 日目の入院は経済的に魅力的であろうということが示された.
一般的に受け入れられている標準から考えると,合併症が発症しなかった心筋梗塞患者を血栓溶解療法後 3 日以降も入院させることは,経済的には魅力的なものではない.