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March 16, 2000 Vol. 342 No. 11

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シリコン乳房植込みと結合組織疾患のリスクとの関係に関するメタアナリシス
Meta-Analyses of the Relation between Silicone Breast implants and the Risk of Connective-Tissue Diseases

E.C. JANOWSKY, L.L. KUPPER, AND B.S. HULKA

背景

シリコン乳房植込みと結合組織疾患および自己免疫疾患のリスクとの関係が疑われるようになって,ここ 10 年間に,医学的および法律上の関心が高まってきている.この課題については,数多くの研究が実施されているにもかかわらず,重要な問題が残ったままである.今回の検討では,この仮定されている関係の解明により強力な定量的根拠を提供することを目的として,報告されている関連研究の結果を結合,比較,および要約するメタアナリシスのいくつかの手法を適用した.

方 法

あらかじめ規定した組入れ基準に合致する研究を識別するために,データベースの検索を行うとともに,得られた関連論文の引用文献についても詳しく調べた.このようにして,今回のメタアナリシスには,コホート研究の 9 研究,症例対照研究の 9 研究,および断面研究の 2 研究が組み入れられた.これらの研究の結果のメタアナリシスは,交絡因子で補正した場合と,補正しない場合の両方を実施し,これとは別に,シリコンゲル乳房植込みに関する研究のみを対象とした解析も行った.そして,最後に,乳房植込みが原因と考えられる結合組織疾患の年間の新患患者数を推定した.

結 果

乳房植込みが,結合組織の各疾患の要約補正相対危険度の有意な上昇と関連していることの根拠となるような結果は得られなかった(慢性関節リウマチ(RA),1.04 [95%信頼区間,0.72~1.51];全身性エリテマトーデス(SLE),0.65 [95%信頼区間,0.35~1.23];強皮症または全身性硬化症,1.01 [95%信頼区間,0.59~1.73];およびシェーグレン症候群,1.42 [95%信頼区間,0.65~3.11]);結合組織疾患とされたもの全体(0.80; 95%信頼区間,0.62~1.04);これら以外の自己免疫疾患あるいはリウマチ疾患(0.96; 95%信頼区間,0.74~1.25).補正なしの解析でも,また,シリコンゲル乳房植込みのみの解析でも,リスクの有意な上昇を示すような結果は得られなかった.

結 論

今回のメタアナリシスの結果からは,乳房植込み全般,あるいはとくにシリコンゲル乳房植込みのみと,結合組織の各疾患,結合組織疾患を合わせた全体,あるいはその他の自己免疫疾患やリウマチ疾患とのあいだには,何らかの関連を示すような根拠は認められなかった.公衆衛生的見地からは,乳房植込みは,結合組織疾患を発症する女性の患者数にはごくわずかな影響しか与えないものと考えられ,インプラントを取り除くことによって結合組織疾患の発症率が低下するとは考えにくい.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2000; 342 : 781 - 90. )