November 23, 2000 Vol. 343 No. 21
股関節プロテクターの使用による高齢者における股関節部骨折の予防
Prevention of Hip Fracture in Elderly People with Use of a Hip Protector
P. KANNUS AND OTHERS
股関節部骨折は,世界中で体力の衰えた高齢成人によくみられる.われわれは,このような加齢に関連した骨折のリスクに対する,解剖学的にデザインされた外部装着股関節プロテクターの効果について検討した.
歩行は可能であるが体力の衰えた高齢成人 1,801 例(女性 1,409 例,男性 392 例;平均年齢,82 歳)を,1:2 の割合で,股関節プロテクターを装着した群と対照群のいずれかに無作為に割り付けた.股関節部の骨折とその他のすべての部位における骨折についての記録は,対照群で股関節部骨折が 62 件発生してからちょうど 1 ヵ月が経過するまで収集した.これらの 2 群における骨折のリスクを比較し,股関節プロテクター群の骨折のリスクについては,さらに,転倒時にプロテクターを装着していたかどうかによる解析も行った.
追跡調査中に股関節部骨折が発生した被験者は,股関節プロテクター群の 13 例に対して,対照群では 67 例であった.それぞれの群における股関節部骨折の発生率は,1,000 人-年当り 21.3 および 46.0 であった(股関節プロテクター群の相対ハザード,0.4; 95%信頼区間,0.2~0.8; p = 0.008).骨盤骨折のリスクも,股関節プロテクター群が,対照群よりも有意ではなかったもののわずかに低かった(各群で骨盤骨折が発生した被験者は 2 例および 12 例)(相対ハザード,0.4;95%信頼区間,0.1~1.8;p≧0.05).その他の部位における骨折のリスクは 2 群で同程度であった.股関節プロテクター群の股関節部骨折者の内訳は,プロテクターを装着しているときに骨折した被験者が 4 例(転倒 1,034 件),プロテクターを装着していないときに骨折した被験者が 9 例(転倒 370 件)であった(相対ハザード,0.2;95%信頼区間,0.05~0.5;p = 0.002).
体力の衰えた高齢成人における股関節部骨折のリスクは,解剖学的にデザインされた外部装着股関節プロテクターの使用によって低下させることが可能である.