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December 28, 2000 Vol. 343 No. 26

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バンコマイシン耐性腸球菌の定着が認められた患者の糞便中の細菌密度に対する抗生剤療法の影響
Effect of Antibiotic Therapy on the Density of Vancomycin-Resistant Enterococci in the Stool of Colonized Patients

C.J. DONSKEY AND OTHERS

背景

バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)の定着と感染は,嫌気性菌に対して強い抗菌活性を有する抗生剤の曝露に関連している.腸管にバンコマイシン耐性腸球菌が定着しているマウスでは,これらの抗生剤が定着している細菌の高密度化を促すが,嫌気性菌に対して最小限度の抗菌活性しか有していない抗生剤にはこのような作用は認めらない.

方 法

糞便中の細菌の存在によってバンコマイシン耐性腸球菌の定着を確認した 51 例の患者を対象として,7 ヵ月間のプロスペクティブ試験を実施した.糞便中のバンコマイシン耐性腸球菌の密度を抗生剤レジメンによる治療中および治療後に測定し,この密度に対する抗嫌気性菌薬と最小限度の抗嫌気性菌活性しかない薬剤の影響を比較した.10 例の患者から成る部分集団では,環境検体(例えば,寝床と衣服から採取した検体)の培養も実施した.

結 果

検討した 42 種類の抗嫌気性菌抗生剤レジメンのうちの 40 レジメン(95%)において,その治療期間中にバンコマイシン耐性腸球菌の高密度の定着が維持されていた(糞便中の平均 [±SD] 菌数,7.8±1.5 log/g).これらのレジメンの終了後に定着細菌の密度の低下がみられた.少なくとも 1 週間にわたって抗嫌気性菌抗生剤の投与を受けなかった患者において,このようなレジメンを開始した 13 例の患者のうちの 10 例において菌数が増加し,その増加は 1.0 log/g を超えたが(平均増加,2.2 log/g),最小限度の抗嫌気性菌活性しか有していない抗生剤のレジメンを開始した 10 例の患者では,腸球菌の菌数は減少し,その平均減少は 0.6 log/g であった(群間差では p = 0.006).糞便中のバンコマイシン耐性腸球菌の密度が 4 log/g 以上の場合では,環境検体の培養 12 セット中の 10 セットにおいて少なくとも 1 検体が陽性であったのに対して,糞便中の平均菌数が 4 log/g 未満の患者からの環境検体の培養では 9 セット中の 1 セットが陽性であった(p = 0.002).

結 論

糞便中にバンコマイシン耐性腸球菌が検出された患者では,抗嫌気性菌抗生剤による治療によって,高密度の定着が促進される.それゆえ,これらの患者に対してこの種の薬剤の使用を制限することが,バンコマイシン耐性腸球菌の拡大を抑えるのに役立つかもしれない.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2000; 343 : 1925 - 32. )