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August 24, 2000 Vol. 343 No. 8

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冠動脈アテローム性硬化症の進行に対するエストロゲン補充の効果
Effects of Estrogen Replacement on the Progression of Coronary-Artery Atherosclerosis

D.M. HERRINGTON AND OTHERS

背景

心疾患は,女性の病気や死亡の主要な原因の一つである.心疾患の治療および予防におけるエストロゲンの役割をさらに深く理解するためには,冠動脈のアテローム性硬化症に対するエストロゲンの効果と,同時併用されるプロゲスチン療法によってエストロゲン効果に与える影響の程度についてのさらに多くの情報が必要である.

方 法

血管造影法で冠動脈疾患が確認された女性 309 例を,1 日当り 0.625 mg の抱合型エストロゲンの投与,1 日当り 0.625 mg の抱合型エストロゲンと 2.5 mg の酢酸メドロキシプロゲステロンの投与,またはプラセボの投与に無作為に割り付けた.そして,これらの女性を,平均(±SD)で 3.2±0.6 年間追跡調査した.試験開始時および追跡調査時に撮影した冠動脈の血管造影図は,定量的な方法を用いて分析した.

結 果

エストロゲン投与とエストロゲン+酢酸メドロキシプロゲステロン投与は,低比重リポタンパク(LDL)コレステロールの濃度を有意に低下させ(それぞれ 9.4%低下,16.5%低下),高比重リポタンパク(HDL)コレステロールの濃度を有意に上昇させた(それぞれ 18.8%上昇,14.2%上昇); しかし,冠動脈のアテローム性硬化症の進行については,いずれの治療も影響を及ぼさなかった.試験開始時の測定値で補正した追跡調査時の冠動脈の平均(±SD)最小内径は,エストロゲン群 1.87±0.02 mm,エストロゲン+酢酸メドロキシプロゲステロン群 1.84±0.02 mm,プラセボ群 1.87±0.02 mm であった.二つの実薬治療群とプラセボ群の血管径の差は有意ではなかった.血管造影図で評価したいくつかの副次的転帰の解析でも,これらの女性の部分集団の解析でも,同様の結果が得られた.また,臨床的な心血管系イベントの発生率も治療群間で同程度であった.

結 論

冠動脈疾患が確認されている女性においては,エストロゲンの単独療法とエストロゲン+酢酸メドロキシプロゲステロンの併用療法のいずれも,冠動脈のアテローム性硬化症の進行に影響を及ぼさなかった.今回得られた結果は,このような女性に対しては,エストロゲン補充は,心血管系に対する有益性を期待して実施すべきではないということを示唆している.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2000; 343 : 522 - 9. )