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July 13, 2000 Vol. 343 No. 2

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癌の原因における環境要因と遺伝的要因 ― スウェーデン,デンマーク,フィンランドの双生児コホートの解析
Environmental and Heritable Factors in the Causation of Cancer — Analyses of Cohorts of Twins from Sweden, Denmark, and Finland

P. LICHTENSTEIN AND OTHERS

背景

散発性に発生する癌の原因に対する遺伝因子の寄与は明らかになっていない.このような悪性腫瘍の発生に対する遺伝子の全体的な関与の推定は,双生児を対象とした研究によって可能である.

方 法

癌患者の双生児における 28 の解剖学部位に発生する癌のリスクを評価することを目的として,スウェーデン,デンマーク,およびフィンランドの双生児登録にリストされていた 44,788 組の双生児のデータを併合した.そして,統計モデルを構築するという方法を用いて,これらの 11 の解剖学的部位に発生する癌の原因としての遺伝性因子と環境因子の相対的重要性を推定した.

結 果

9,512 組の双生児のうち 10,803 例に,少なくとも 1 種類の癌が発生した.胃癌,結腸直腸癌,肺癌,乳癌,および前立腺癌に関して,患者の双生児のあいだでリスクの上昇が認められた.統計学的に有意な遺伝性因子の影響は,前立腺癌(リスクの 42%は遺伝性因子で説明できると考えられる;95%信頼区間,29~50%),結腸直腸癌(35%;95%信頼区間,10~48%),および乳癌(27%;95%信頼区間,4~41%)で観察された.

結 論

遺伝学的要因は,ほとんどの種類の悪性新生物に対する感受性にわずかに寄与しているにすぎない.ここで得られた結果は,散発性の癌の発生には環境が重要な役割を担っているということを示している.いくつかの部位に発生する癌(前立腺癌や結腸直腸癌など)において認められた遺伝率の比較的大きな影響は,今日までに得られている癌の遺伝学の知識に大きな溝があることを示唆している.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2000; 343 : 78 - 85. )