September 21, 2000 Vol. 343 No. 12
自己免疫性自律神経ニューロパチーにおける神経節アセチルコリン受容体に対する自己抗体
Autoantibodies to Ganglionic Acetylcholine Receptors in Autoimmune Autonomic Neuropathies
S. VERNINO AND OTHERS
特発性自律神経ニューロパチーは,基礎に自己免疫が関与しているのではないかと考えられている重症の亜急性障害である.この疾患は,肺癌やその他の腫瘍を随伴することのある,亜急性の自律神経ニューロパチーとの鑑別が困難である.自律神経節にあるニコチン作動性のアセチルコリン受容体に特異的な自己抗体が病因である可能性があり,さまざまな病型の自己免疫性自律神経ニューロパチーの血清マーカーとして利用することができるかもしれない.
自律神経障害の病型の一種に分類された患者 157 例の血清で検査を行った.神経節の受容体に結合あるいは受容体を遮断する自己抗体の検出には,ヨウ素 125(125 I)で標識したエピバチジンと可溶化したヒト神経芽細胞腫のアセチルコリン受容体との免疫沈降分析を用いた.
神経節の受容体に結合する抗体は,特発性または傍腫瘍性の自律神経ニューロパチーの患者 46 例中の 19 例(41%)と,体位性頻脈症候群,特発性消化管運動機能障害,または糖尿病性自律神経ニューロパチーの患者 67 例中の 6 例(9%)に検出されたが,その他の自律神経疾患の患者 44 例には検出されなかった.受容体結合抗体高値は,より重度の自律神経障害(緊張性瞳孔の存在も含む)と相関した.臨床所見に改善が認められた患者では,これらの抗体値が低下した.神経節の受容体を遮断する抗体が検出された 7 例は,全例が神経節の受容体に結合する抗体を有し,特発性または傍腫瘍性の自律神経ニューロパチーの患者であった.
神経節のアセチルコリン受容体に結合,あるいはそれを遮断する抗体の血清反応が陽性であれば,さまざまな病型の自己免疫性自律神経ニューロパチーの患者を同定することが可能であり,自律神経障害の他の病型と鑑別することができる.神経節の受容体抗体値と自律神経障害とのあいだに認められた正の相関関係は,これらの抗体がこの種の病型のニューロパチーの発症に役割を担っていることを示唆している.