September 28, 2000 Vol. 343 No. 13
遺伝性出血性毛細血管拡張症の患者における肝疾患
Liver Disease in Patients with Hereditary Hemorrhagic Telangiectasia
G. GARCIA-TSAO AND OTHERS
遺伝性出血性毛細血管拡張症,すなわちランデュ–オスラー–ウェーバー病は,多くの臓器を侵す血管形成異常病変(毛細血管拡張症と動静脈の奇形)が特徴の常染色体優性遺伝の疾患である.この疾患の患者における肝臓への影響については,その特徴は十分には調べられていない.
遺伝性出血性毛細血管拡張症で,肝臓病変による症状が認められた 19 例の患者を対象として,その臨床所見と,血行動態,血管造影法,および画像検査の結果について検討した.
本試験で評価した患者は,34~74 歳の女性 14 例と男性 5 例であった.1 例を除くすべての患者に循環亢進状態(心係数,4.2~7.3 L/分/m2 体表面積)を認めた.このうち 8 例では,その臨床所見が高拍出性心不全の存在と一致した.心係数と肺動脈楔入圧については,これらの測定が行われた 6 例で上昇していた.中央値で 24 ヵ月後,この 8 例の病態は,薬物療法により 3 例では改善し,4 例では安定したが,1 例は死亡した.6 例に,腹水や静脈瘤出血などの門脈圧亢進症が出現した.肝臓の洞様毛細血管圧は,測定された 4 例で上昇していた.中央値で 19 ヵ月後,この 6 例のうち 2 例の病態は改善したものの,残りの 4 例は死亡した.5 例に,アルカリホスファターゼ上昇や胆管の画像検査異常などの胆道疾患が発現した.中央値で 30 ヵ月後,この 5 例のうち 2 例の病態は改善し,1 例では不変であったが,1 例には心不全が出現し,残りの 1 例は肝移植の試みが不成功に終わり死亡した.
遺伝性出血性毛細血管拡張症で,肝臓病変による症状が認められる患者に現れる典型的な臨床症候としては,高拍出性心不全,門脈圧亢進症,および胆道疾患などがある.