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July 13, 2000 Vol. 343 No. 2

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鈍的外傷患者における頸椎損傷を除外するための臨床基準の妥当性
Validity of a Set of Clinical Criteria to Rule Out Injury to the Cervical Spine in Patients with Blunt Trauma

J.R. HOFFMAN, W.R. MOWER, A.B. WOLFSON, K.H. TODD, AND M.I. ZUCKER

背景

臨床医は不顕性の頸椎損傷を見落すことを恐れているために,鈍的外傷で来院してくる患者のほぼ全例の脊椎 X 線写真を入手している.先行研究では,臨床的基準の組み合せによって,頸椎損傷の確率が非常に低く,そのため画像検査が必要ない患者を鑑別できる可能性が示唆されている.

方 法

今回,われわれは,米国全土の 21 の医療センターで,このような臨床的基準の組み合せについての前向き観察研究を実施した.今回検討した組み合せでは,頸椎損傷の可能性が低い患者の分類には,以下の五つの基準を満たす必要があった:頸正中部の圧痛なし,限局性神経欠損なし,注意力正常,中毒なし,および有痛性の錯乱状態になるような傷害なし.この決定手段の効能を,鈍的外傷を負った後に頸椎の X 線撮影を受けた 34,069 例の患者において検討した.

結 果

この決定手段では,頸椎損傷であった 818 例の患者のうち,8 例を除いたすべての患者を鑑別することができた(感度,99.0% [95%信頼区間,98.0~99.6]).陰性反応適中度は 99.8%(95%信頼区間,99.6~100%),特異度は 12.9%,陽性反応適中度は 2.7%であった.この決定手段によって頚椎損傷の可能性はありそうにないと分類された患者のうち,前もって設定しておいた臨床的に重要な損傷の定義に合致した患者は 2 例のみで(感度,99.6% [95%信頼区間,98.6~100%];陰性反応適中度,99.9% [95%信頼区間,99.8~100%];特異度,12.9%;陽性反応適中度,1.9%),この 2 例の患者で外科的治療を受けたのは 1 例だけであった.今回検討した決定手段を用いた評価結果に従うと,34,069 例の評価患者のうち 4,309 例(12.6%)は,X 線画像検査を避けることができたはずである.

結 論

臨床的基準に基づいた簡単な決定手段は,鈍的外傷後の頸椎損傷を調べるために X 線撮影が必要な患者を,臨床医が確実に鑑別できるように手助けしてくれるだろう.そして,この決定手段が臨床応用されるようになれば,この種の患者に行われている画像検査を減少させることができると思われる.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2000; 343 : 94 - 9. )