January 11, 2001 Vol. 344 No. 2
夜間に血液透析を受けている慢性腎不全患者における睡眠時無呼吸の改善
Improvement of Sleep Apnea in Patients with Chronic Renal Failure Who Undergo Nocturnal Hemodialysis
P.J. HANLY AND A. PIERRATOS
睡眠時無呼吸は,慢性腎不全の患者ではよくみられるものであるが,従来の血液透析法や腹膜透析法では改善されない.夜間血液透析法というのは,患者が自宅で 1 週間に 7 日間,夜間の睡眠中に血液透析を受ける透析法である.われわれは,夜間血液透析法のより優れた効果によって,慢性腎不全の患者の睡眠時無呼吸が改善できるだろうという仮説を立てた.
1 日 4 時間の従来の血液透析法を 1 週間に 3 日受けていた 14 例の患者を対象として,夜通しの睡眠ポリグラフィー検査を実施した.次に,これらの患者の血液透析を,1 週間に 6 日または 7 日行う 1 日 8 時間の夜間血液透析法に変更した.夜間血液透析法を開始してから 6~15 ヵ月後に,夜間血液透析を実施している夜と実施していない夜に,再度,睡眠ポリグラフィー検査を実施した.
患者の血清中の平均(±SD)クレアチニン濃度は,夜間血液透析法を受けていた期間の方が,従来の血液透析法を受けていた期間よりも有意に低くなっていた(3.9±1.1 対 12.8±3.2 mg/dL [342±101 対 1,131±287 μmol/L],p<0.001).また,従来の血液透析法から夜間血液透析法に変更したことによって,無呼吸および低呼吸の発生頻度は低下し,睡眠 1 時間当りの無呼吸および低呼吸のエピソード数は 25±25 から 8±8 へと減少した(p = 0.03).この発生頻度の低下は,睡眠時無呼吸が認められていた 7 例の患者でとくに顕著で,これらの患者のエピソードの発生頻度は 1 時間当り 46±19 から 9±9 へと低下していた(p = 0.006).さらに,これに伴って,最小酸素飽和度(89.2±1.8%から 94.1±1.6%へ,p = 0.005),経皮的に測定した二酸化炭素分圧(38.5±4.3 mmHg から 48.3±4.9 mmHg へ,p = 0.006),および血清中の重炭酸塩濃度(23.2±1.8 mmol/L から 27.8±0.8 mmol/L へ,p<0.001)の上昇が認められた.これら 7 例の患者が夜間血液透析法を受けていた期間で血液透析を実施しなかった夜に測定した夜間の無呼吸–低呼吸指数は,血液透析を実施した夜に測定した指数よりも高値であったが,それでも従来の血液透析法を受けていた期間に測定した指数よりは低値であった(p = 0.05).
慢性腎不全に関連した睡眠時無呼吸は,夜間血液透析法によって改善することができる.