慢性骨髄性白血病における BCR-ABL チロシンキナーゼ特異的阻害剤の有効性と安全性
Efficacy and Safety of a Specific Inhibitor of the BCR-ABL Tyrosine Kinase in Chronic Myeloid Leukemia
B.J. DRUKER AND OTHERS
BCR-ABL は,構成的に活性化されたチロシンキナーゼで,慢性骨髄性白血病(CML)を引き起こす.このチロシンキナーゼの活性は,BCR-ABL の形質転換機能には本質的なものであることから,チロシンキナーゼの阻害剤は CML の有効な治療法になるかもしれない.
BCR-ABL チロシンキナーゼの特異的阻害剤である STI571(以前は CGP 57148B として知られていた)の第 I 相の用量増加試験を実施した.インターフェロンα の治療が無効であった CML の慢性期の患者 83 例に,STI571 の経口投与を行った.各患者を 1 日用量が 25~1,000 mg までの 14 段階の用量のうちの一つに順番に割付けた.
STI571 の有害作用は最小限のものであった;もっとも一般的なものは悪心,筋肉痛,浮腫,および下痢であった.最大耐用量は同定できなかった.白血球数と血小板数に基づいた血液学的完全寛解は,1 日用量が 300 mg 以上の治療を受けた 54 例の患者のうちの 53 例に観察され,典型的にはこの効果は治療開始後 4 週目までに発現した.1 日用量が 300 mg 以上の治療を受けた 54 例の患者のうちの 29 例には,細胞遺伝学的効果も認められ,このうちの 17 例(この用量の投与を受けた 54 例の患者の 31%)は有効以上であった(分裂期細胞のフィラデルフィア染色体陽性が 0~35%);これらの患者の 7 例には細胞遺伝学的完全寛解が得られた.
STI571 は,インターフェロンα の治療が無効であった CML の患者において,忍容性に優れ,しかも有意な抗白血病活性を有している.この試験で得られた結果は,CML において BCR-ABL チロシンキナーゼの活性が必要不可欠な役割を果していることを示す根拠を与えるとともに,ヒトの癌に存在する特異的な分子異常に基づいた抗癌剤の開発の可能性を証明するものである.