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April 19, 2001 Vol. 344 No. 16

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結腸癌における術後補助化学療法後の生存についての分子予測因子
Molecular Predictors of Survival after Adjuvant Chemotherapy for Colon Cancer

T. WATANABE AND OTHERS

背景

術後補助化学療法は III 期の結腸癌の患者の生存を改善させるが,この転帰についての信頼性の高い分子予測因子は同定されていない.

方 法

分子マーカーとして,染色体の 18q,17p,および 8p からの染色体物質の喪失(ヘテロ接合性の喪失または対立遺伝子の喪失とも呼ばれている);p53 および p21WAF1/CIP1 蛋白質の細胞内量;およびマイクロサテライトの不安定性について評価した.これらのマーカーの生存予測能を調べるために,術後補助療法としてフルオロウラシル,ロイコボリン,およびレバミゾール(Levamisole)のさまざまな併用治療を受けた結腸癌の III 期の患者と II 期の高リスク患者 460 例から採取した腫瘍組織を用いて分析した.

結 果

18q におけるヘテロ接合性の喪失は 319 個の癌のうち 155 個(49%)に存在していた.マイクロサテライトの高度不安定性は 298 個の腫瘍のうち 62 個(21%)で確認され,これらの 62 個の腫瘍のうちの 38 個(61%)には,トランスフォーミング増殖因子 β1(TGF-β1)の II 型受容体の遺伝子に突然変異が認められた.マイクロサテライトが安定していた III 期の癌の患者では,フルオロウラシルを基本とした化学療法を受けたあとの 5 年生存率は,18q の対立遺伝子が保持されていた癌の患者で 74%,18q の対立遺伝子が喪失していた患者で 50%であった(18q の喪失が存在している場合の死亡の相対リスク,2.75;95%信頼区間,1.34~5.65;p=0.006).マイクロサテライトの不安定性が高度であった癌の患者の 5 年生存率は,TGF-β1 の II 型受容体の遺伝子に突然変異が存在していた腫瘍の患者で 74%,この突然変異が存在していなかった腫瘍の患者で 46%であった(死亡の相対リスク,2.90;95%信頼区間,1.14~7.35;p=0.03).

結 論

III 期の結腸癌では,マイクロサテライトが安定している癌では 18q の対立遺伝子が保持されていること,マイクロサテライトの不安定性が高度な癌では TGF-β1 の II 型受容体の遺伝子に突然変異が存在することが,フルオロウラシルを基本としたレジメンによる術後補助化学療法を実施したときに,その転帰が良好であることを指示している.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2001; 344 : 1196 - 206. )