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June 7, 2001 Vol. 344 No. 23

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エストロゲン療法中の甲状腺機能低下症の女性におけるサイロキシンの必要性の増加
Increased Need for Thyroxine in Women with Hypothyroidism during Estrogen Therapy

B.M. ARAFAH

背景

サイロキシンで治療される甲状腺機能低下症の女性では,妊娠時に,しばしば投与量を増量する必要がある.この増量の必要性は,単に血清サイロキシン結合グロブリンがエストロゲンによって増加することだけによるものなのか,それともほかの要因が関与しているのかということはわかっていない.

方 法

甲状腺機能が正常な閉経後の女性 11 例と,サイロキシンの治療を受けている甲状腺機能低下症の閉経後の女性 25 例において,甲状腺の機能を,エストロゲン療法を開始する前および開始後 6 週間ごと,48 週間にわたって評価した.検討した甲状腺機能低下症の女性は,18 例がサイロキシン補充療法を,7 例が甲状腺刺激ホルモン抑制サイロキシン療法を受けていた.各評価時点において,血清サイロキシン,遊離サイロキシン,甲状腺刺激ホルモン,およびサイロキシン結合グロブリンの測定を行った.

結 果

甲状腺機能が正常な女性では,血清中の遊離サイロキシンおよび甲状腺刺激ホルモンの濃度には変化は認められなかったが,エストロゲン療法開始 12 週目に,平均(±SD)血清サイロキシン濃度が 8.0±0.9 μg/dL(103±12 nmol/L)から 10.4±1.5 μg/dL(134±19 nmol/L)に上昇し(p<0.001),血清サイロキシン結合グロブリン濃度も 20.3±3.5 mg/L から 31.3±3.2 mg/L に上昇した(p<0.001).甲状腺機能低下症の女性にも,エストロゲン療法中に,血清サイロキシンとサイロキシン結合グロブリンの濃度に同様の上昇が認められたが,血清中の遊離サイロキシン濃度は 1.7±0.4 ng/dL(22±5 pmol/L)から 1.4±0.3 ng/dL(18±4 pmol/L)に低下し(p<0.001),血清甲状腺刺激ホルモン濃度は 0.9±1.1 μU/mL から 3.2±3.1 μU/mL に上昇した(p<0.001).血清甲状腺刺激ホルモン濃度は,サイロキシン補充群の女性では 18 例中 7 例で 7 μU/mL 以上に上昇し,甲状腺刺激ホルモン抑制群の女性では 7 例中 3 例で 1 μU/mL 以上に上昇した.

結 論

サイロキシンの治療を受けている甲状腺機能低下症の女性では,エストロゲン療法によってサイロキシンの必要性が増加することがある.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2001; 344 : 1743 - 9. )