ジャームラインでの E-カドヘリン突然変異の若年無症候性保因者における早期胃癌
Early Gastric Cancer in Young, Asymptomatic Carriers of Germ-Line E-Cadherin Mutations
D.G. HUNTSMAN AND OTHERS
E-カドヘリン(CDH1)遺伝子でジャームラインにおいて先端が欠失するトランケイティング突然変異は,遺伝性のびまん性胃癌が発症した家系で発見されている.これらの家系では,とくに若年層において,常染色体優性の遺伝パターンを示す高度に受け継がれているびまん性胃癌に対する感受性が認められることが特徴になっている.われわれは,遺伝性のびまん性胃癌が発症した血縁関係のない二つの家系のうち,CDH1 のトランケイティング突然変異を保因していた若年者に対して実施した遺伝学的スクリーニング,手術による管理,およびその病理学検査の所見について報告する.
ポリメラーゼ連鎖反応により遺伝子を増幅し,家系 1 では制限酵素による消化と DNA の塩基配列決定を実施,家系 2 ではヘテロ二本鎖分析を実施して,突然変異を特異的に予測する遺伝診断を行った.年齢が 22~40 歳の突然変異の保因者 5 例に対しては,予防的に胃の全摘出術を行った.これらの各症例から,顕微鏡分析のための検体を胃の粘膜全体にわたって広範囲に採取した.
胃切除術を受けた 5 例から手術で採取した全員の検体に,悪性印環細胞の表在性の浸潤が同定された.これらの早期びまん性胃癌は,5 例のうち 3 例で多発性のものであった.このうちの 1 例については,分析した 140 個の組織ブロックのうちの 65 個に悪性印環細胞の浸潤が認められたが,これは,胃の粘膜全体の 2%未満に相当する.
高度に受け継がれる遺伝性のびまん性胃癌の家系で,ジャームラインのトランケイティング CDH1 突然変異の無症候性保因者の若年者に対しては,遺伝カウンセリングと予防的胃切除術の検討を推奨する.