米国における 1963~99 年の輸血伝播性マラリア
Transfusion-Transmitted Malaria in the United States from 1963 through 1999
M. MUNGAI, G. TEGTMEIER, M. CHAMBERLAND, AND M. PARISE
輸血によって伝播されるマラリアは,米国ではあまり一般的なものではない.輸血による感染が原因となって併発した Plasmodium falciparum(熱帯熱マラリア原虫)感染症が 3 例報告されたことから,1963~99 年の期間に米国疾病対策センター(Center for Disease Control and Prevention:CDC)に報告された輸血伝播性マラリアのすべての症例について再調査を行った.
輸血伝播性マラリアの患者の情報については,CDC に送られた監視報告書から入手した.輸血された血液の提供にかかわっていた供血者の情報については,全米マラリア監視システム(National Malaria Surveillance System)から入手した.血液提供から除外されるべき供血者であったのかどうかを調べるために,これらの供血者の特性を,米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)と米国血液バンク協会(American Association of Blood Banks)の除外ガイドラインと比較した.
28 州において報告された 93 例の輸血伝播性マラリアの症例の内訳は,33 例(35%)が P. falciparum,25 例(27%)が P. vivax(三日熱マラリア原虫),25 例(27%)が P. malariae(四日熱マラリア原虫),5 例(5%)が P. ovale(卵形マラリア原虫)による感染で,3 例(3%)は混合感染,2 例(2%)は種までは同定されていないものであった.93 例の患者のうち,10 例(11%)が死亡した.これらの患者に輸血された可能性があった供血者は 91 例であり(同一供血者から 2 例の患者に血液が提供されたケースが 2 件あった),これらの供血者のうち 67 例(74%)において,感染力があったことを確認することができた.関係した供血者のうち,出生国が報告されていた供血者は 64 例で,そのうちの 38 例(59%)は外国で生まれていた.すべての情報を入手することができた供血者を対象に血液提供の適格性を検討した結果,現行のガイドライン(1994 年より施行)に従った場合には 60 例中 37 例(62%)が血液提供から除外されることになり,供血時に施行されていたガイドラインのもとでも 48 例中 30 例(62%)は除外されるべきであった.
輸血伝播性マラリアを防ぐ最善の方法は,現在においても,推奨されている除外ガイドラインに沿って供血者を慎重にスクリーニングすることである.