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January 4, 2001 Vol. 344 No. 1

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肝硬変患者の静脈瘤出血に対するバプレオチドの早期投与
Early Administration of Vapreotide for Variceal Bleeding in Patients with Cirrhosis

P. CALÈS AND OTHERS

背景

肝硬変の患者においては,薬物療法あるいは内視鏡治療によって静脈瘤の出血を管理できることがある.しかしながら,内視鏡治療と併せて行うソマトスタチン類似物質の早期投与の効果については不明である.

方 法

急性の上部胃腸管出血によって入院してきた肝硬変の患者 227 例を対象として,内視鏡治療の前にソマトスタチン類似物質の一種であるバプレオチド(vapreotide)の投与を開始する治療の効果について検討した.これらの患者を,入院してから平均(±SD)で 2.3±1.5 時間以内に,バプレオチドを投与する群(50 μg を静脈内にボーラス投与し,その後 5 日間 50 μg/時の速度で点滴投与)と,プラセボを投与する群に無作為に割り付けた.これらの患者に対する内視鏡治療は,点滴を開始してから平均で 2.6±3.3 時間に実施された.出血の原因が門脈圧亢進によるものではなかった 31 例を除外すると,各群の患者数は 98 例になった.

結 果

内視鏡治療の時点において出血が認められた患者は,バプレオチド群では 91 例中 28 例(31%)であったのに対して,プラセボ群では 93 例中 43 例(46%)であった(p = 0.03);12 例は,内視鏡治療が実施不可能,または門脈圧亢進性の胃疾患であった.5 日間の点滴期間中に本治療の主目的 ― 生存および出血の管理 ― が達成された患者は,バプレオチド群では 98 例中 65 例(66%)であったのに対して,プラセボ群では 98 例中 49 例(50%)であった(p = 0.02).さらに,バプレオチド群の患者では輸血量が有意に少なかった(2.0±2.2 対 2.8±2.8 単位,p = 0.04).しかし,42 日目までの全死亡率に関しては 2 群間に有意な差は認められなかった.

結 論

肝硬変で静脈瘤の出血が認められる患者の急性出血の管理方法としては,バプレオチドと内視鏡治療を併用する方が,内視鏡治療の単独よりも有効である.しかしながら,この併用療法を用いても 42 日目までの死亡率は変わらない.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2001; 344 : 23 - 8. )