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February 22, 2001 Vol. 344 No. 8

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アルコール脱水素酵素の遺伝的変異と心筋梗塞に対する中等度のアルコール摂取の有益作用
Genetic Variation in Alcohol Dehydrogenase and the Beneficial Effect of Moderate Alcohol Consumption on Myocardial Infarction

L.M. HINES AND OTHERS

背景

アルコールの代謝速度は,アルコール脱水素酵素 3 型(ADH3)の遺伝子の多型性によって異なる.そこで,前向きの医師健康研究(Physicians' Health Study)から得られたデータを用いたコホート内症例対照研究において,ADH3 の多型性,アルコール摂取量,および心筋梗塞のリスクの関係について検討した.

方 法

医師健康研究に参加していた男性のなかから,適格症例として心筋梗塞と新たに診断された患者を 396 例同定した.このうち,374 例にはそれぞれ無作為に選択した対照被験者を 2 例ずつマッチさせ,残りの 22 例にはそれぞれ 1 例の対照被験者をマッチさせた(全体で 770 例の対照).ADH3 の遺伝子型(γ1γ1,γ1γ2,γ2γ2)を,すべての被験者で決定した.アルコール摂取量,ADH3 の遺伝子型,および高比重リポ蛋白(HDL)の血漿中濃度の関係を,この研究の対象集団で調べるとともに,この対象集団と類似した女性コホートでも検討した.

結 果

急速なエタノール酸化に関連している対立遺伝子(γ1)のホモ接合性と比較して,速度の遅いエタノール酸化に関連している対立遺伝子(γ2)のホモ接合性には,心筋梗塞のリスクの低下との関連が認められた(相対リスク,0.65;95%信頼区間 0.43~0.99).三つの遺伝子型のすべての群(γ1γ1,γ1γ2,γ2γ2)において,中等度のアルコール摂取と,心筋梗塞のリスクの低下との関連が認められた;しかし,この関連は,ADH3 の遺伝子型によって有意に異なっていた(交互作用について p = 0.01).対立遺伝子 γ1 のホモ接合であった男性において,アルコール摂取量が 1 日 1 杯以上であった男性の心筋梗塞の相対リスクは,週 1 杯未満であった男性のリスクとの比較では 0.62(95%信頼区間 0.34~1.13)であった.アルコール摂取量が 1 日 1 杯以上で,対立遺伝子 γ2 のホモ接合であった男性でもっともリスクの低下が大きかった(相対リスク,0.14;95%信頼区間 0.04~0.45).このような男性は,HDL の血漿中濃度ももっとも高かった(交互作用の p = 0.05).この ADH3 の遺伝子型,アルコール摂取量のレベル,および HDL 濃度の交互作用は,閉経後女性を対象とした別の独立した研究で確認した(p = 0.02).

結 論

酸化速度の遅い ADH3 の対立遺伝子がホモ接合で,中等度に飲酒をしている人は,HDL 濃度がより高く,心筋梗塞のリスクが低くなっている.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2001; 344 : 549 - 55. )