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January 11, 2001 Vol. 344 No. 2

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1,4-ブタンジオールの使用に関連した死亡を含む有害事象
Adverse Events, Including Death, Associated with the Use of 1,4-Butanediol

D.L. ZVOSEC AND OTHERS

背景

1,4-ブタンジオールは工業用溶剤であるが,体内に摂取されると,主に中枢神経系に対する抑制作用をもっているために乱用薬物の一つになっている γ-ヒドロキシ酪酸に変換される.γ-ヒドロキシ酪酸の毒性作用が報告されたことを受けて連邦政府が規制を設けた後に,1,4-ブタンジオールと,γ-ヒドロキシ酪酸のもう一つの前駆物質で工業用溶剤でもある γ-ブチロラクトンが,栄養補助食品として市場で販売されるようになった.そこで,われわれは,1,4-ブタンジオールの摂取による毒性作用の報告を調査し,その健康に対するリスクについて再評価した.

方 法

1999 年 6 月~1999 年 12 月までの期間に,γ-ヒドロキシ酪酸の毒性作用を示唆する臨床症候群が現れて本施設の救急救命部門に訪れた 1,4-ブタンジオールの摂取歴を有する患者と,保健所の職員および家族から指摘された患者とを含む,1,4-ブタンジオールの毒性作用が発現していた症例を同定した.これらの症例の尿中,血清中,または血液中の 1,4-ブタンジオールあるいはその代謝物である γ-ヒドロキシ酪酸を,ガスクロマトグラフィ質量分析を用いて測定した.

結 果

1,4-ブタンジオールを娯楽目的,ボディビルの増強効果,あるいはうつ病や不眠症の治療として摂取していた 8 例の患者に,9 件の毒性作用のエピソードが同定された.これらの患者の 1 例は,毒性作用の発現にて 2 度来院し,2 度目の来院後には禁断症状が現れた.これらの患者に認められた臨床所見および有害事象は,嘔吐,尿失禁と大便失禁,興奮,闘争性,不安定な意識レベル,呼吸抑制,および死亡などであった.2 例の死亡例を含む 6 例の患者では,1,4-ブタンジオールとその代謝物以外の中毒物質は検出されなかった.摂取された 1,4-ブタンジオールの用量は,死亡例では 5.4~20 g で,非死亡例では 1~14 g であった.また,症例によっては,習慣性および禁断症状を示すような所見が認められた.

結 論

1,4-ブタンジオールの健康に対するリスクは,これと同等の物質である γ-ヒドロキシ酪酸や γ-ブチロラクトンのリスクと類似しており,そのリスクには,死に至る可能性のある急性毒性作用や,習慣性および禁断症状などがある.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2001; 344 : 87 - 94. )