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March 29, 2001 Vol. 344 No. 13

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低用量のアスピリンまたはナプロキセンを服薬している Helicobacter pylori 感染患者における再発性上部消化管出血の予防
Preventing Recurrent Upper Gastrointestinal Bleeding in Patients with Helicobacter pylori Infection on Low-Dose Aspirin or Naproxen

F.K.L. CHAN AND OTHERS

背景

上部消化管出血を起こした患者の多くは,心血管系疾患の予防のために低用量のアスピリンや,あるいは筋骨格系の疼痛に対して他の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を服薬し続けている.しかし,このような患者において,Helicobacter pylori 感染が出血の危険因子であるか否かについては確証されていない.

方 法

H. pyrori に感染していて,低用量のアスピリンまたは他の NSAID を服薬中の上部消化管出血の既往を有する患者を対象として試験を実施し,再発性出血の予防には,感染菌の除菌とオメプラゾールの治療のどちらが有効であるのかを評価した.試験では,内視鏡で確認された上部消化管出血の患者を募集した.まず患者の潰瘍を,オメプラゾールの 1 日 1 回 20 mg 投与を 8 週間またはそれ以上実施して治癒させた.その後 6 ヵ月間にわたって,アスピリンを服薬していた患者にはアスピリンを 1 日 1 回 80 mg を投与し,アスピリン以外の NSAID を服薬していた患者にはナプロキセンを,500 mg を 1 日 2 回投与した.アスピリンとナプロキセンの各治療群の患者を,それぞれの治療群内で,オメプラゾールを 6 ヵ月間にわたって 1 日 1 回 20 mg 投与するオメプラゾールの治療,または次クエン酸ビスマス 120 mg,テトラサイクリン 500 mg,メトロニダゾール 400 mg を,それぞれの薬剤を 1 日 4 回投与する 1 週間の除菌療法に無作為に割付けた.なお,除菌療法では,これらの薬剤の投与に続いてプラセボを 6 ヵ月間投与した.

結 果

試験には 400 例の患者が組み入れられた(250 例はアスピリン服薬中の患者,150 例は他の NSAID 服薬中の患者).6 ヵ月間の試験期間に,アスピリンを服薬している患者に出血が再発する確率は,除菌療法を受けた患者では 1.9%,オメプラゾールの治療を受けた患者では 0.9%であった(絶対差,1.0%;差の 95%信頼区間,-1.9~3.9%).アスピリン以外の NSAID を服薬している患者に出血が再発する確率は,除菌療法を受けた患者では 18.8%,オメプラゾールの治療を受けた患者では 4.4%であった(絶対差,14.4%;差の 95%信頼区間,4.4~24.4%;p = 0.005).

結 論

H. pyrori に感染していて上部消化管出血の病歴を有する患者のうち,アスピリンの低用量を服薬している患者に対する再発性出血の予防においては,H. pyrori の除菌はオメプラゾールの治療と同等である.しかし,ナプロキセンのような他の NSAID を服薬している患者に対する再発性出血の予防では,H. pyrori の除菌よりもオメプラゾールの治療が優れている.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2001; 344 : 967 - 73. )